03
「サクラはちょっとあっちで休んでて!」
「え?あ、うん」
私もこうしちゃいられない。
「カカシ先生、また戻ってくるんで」
「りょーかい」
みんながいる場所から少し離れた林まで移動する。
周りに何の気配もないことを確認して、静かに目を閉じた。
(……陽蓮。聞こえる?)
『……葵か。最近は調子が上がってるみたいだな』
(環境も変わったし、良い刺激みたい。ねえ、修行付き合って)
『良いが……早く俺の姿を見れるようになるまで、強くなれよな』
目の前に現れたのは、私。中身は陽蓮だ。影分身みたいなものである。
私の力がもっと強くなれば、陽蓮がちゃんとした形になって見えるようになるんだって。
……けど、陽蓮ってそもそも人の形してるのかな?
『……何考えてる?いくぞ!』
「……!!」
「いや――超楽しいわい。こんなに大勢で食事するのは久しぶりじゃな!」
がつがつと勢いよく晩御飯をたいらげていくのは、ナルトにサスケ、それに……私も例外ではなかった。
「「おかわり!」」
私はともかく、二人の間に火花が散っている。
「「うっ!」」
「吐くんなら食べるのやめなさいよ!」
「…いや食う!」
「我慢してでも食わなきゃ 早く強くなんなきゃなんねーんだから」
そうだよね!けど吐くのは違うでしょ。と思い私も横でいっぱい食べる。
「そういえば葵、あれから何してたの?ずいぶん長い間戻って来なかったけど」
「ん、あ〜ちょっと色々散歩したりしてたの」
「なんだ、私も誘ってくれたら良かったのに!」
そんな会話を交わす私とサクラを、じっと見つめるサスケにカカシ先生。視線が痛い、そんなあからさまに見つめなくても。
「あの〜なんで破れた写真なんか飾ってるんですか?イナリ君ずっとこれ見てたけど。何か写ってた誰かを意図的に破ったって感じよね」
サクラのその言葉に、食卓の空気が固まった。
「……夫よ」
「……かつて……町の英雄と呼ばれた男じゃ…」
その言葉の後、イナリ君は黙って外に出て行ってしまった。
「イナリ!どこ行くの…!?イナリ!父さん!イナリの前ではあの人の話はしないでって…いつも…!」
(何?)
「………イナリ君どうしたっていうの?」
「何か訳ありのようですね……」
「……イナリには血の繋がらない父親がいた……超仲が良く本当の親子のようじゃった…あの頃のイナリはほんとによく笑う子じゃった……
しかしイナリは変わってしまったんじゃ……父親のあの事件以来」
それは、3年前の悲しい物語だった。
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