05
「ったぁ!……」
俯き加減で走っていると、誰かの背中に勢い良くぶつかってしまった。一瞬身構えるが、相手を見ると肩の力が抜けた。
「!
(今のは……殺気だな)
まだ帰ってなかったの?」
「カカシ先生……」
人の顔を見るとなんだか安心して、ぽろぽろ泣きだしてしまった。
「ちょ!俺が泣かせたみたいでしょうが……大丈夫?なんかあった?」
違う。そういう意味を込め、ふるふると首を横に振る。
「……一人で帰れる?大丈夫?」
「はい……ごめんなさい」
あまり表情は読み取れないけれど、少し心配そうな顔をしながらカカシ先生が背中を向けた。
「……!ま、待って」
「!」
去ろうとするカカシ先生の腕を掴む。どうしても、背中を向けた姿があの時のイタチに重ねって見えて仕方が無かった。
おまけに、何年ぶりかに人と触れ合って、まあやったことはサバイバル演習だから楽ではなかったんだけれど、すごく温かく感じた。だから、一人になってしまうのが怖く感じた。
「先生、笑うかもしれないけど……一人が怖いの。家まで、送って……駄目?」
おそるおそるそう聞くと、カカシ先生は優しい目をして笑ってくれた。
「……行くよ」
「!あ、ありがとう……」
その笑顔に少し心臓が跳ねたことは、秘密だ。
20110716
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