03

「ど、し、……て…」


震える手で刺さったクナイを抜くと、どくどくと鮮血が溢れた。咄嗟にそこに手を翳し、医療忍術を施す。しかし思うように進まない。ああそうか、火影様がずっと前に言ってた……私のチャクラはコントロールが難しいんだって。絶望感で満たされた時、力が出せないって……こういうことだったんだ。よわよわしい光しか出ないが、何とか出血はマシになった。するとすでにイタチは部屋から出ようとしている。

「イタチ……」

お兄ちゃんだって、言ってくれたじゃん……なんで黙って行っちゃうの?

「すまないな……葵」

こちらを振り向かずにイタチがそう言う。謝るなら、どうしてこんなことをしたの?

「やだ、行かないで!
っ……ねえ、待ってってば……ぅ、ひっくっ…イタチィ!」

半ば悲鳴のような声で呼ぶと、やっとイタチが振り返る。近づいてきたと思えば、冷たい指で私の涙を拭った。

「おね、が…ねぇってば…… 一人に、しないでよ……」

「すまない」

謝るっていうことは、やっぱり行っちゃうってことなんだ。最後に私の髪に口付けてそのまま出ていこうとする。

「……いつか、」

「!」

「いつか、迎えに来てやるから……強くなれ、葵」

「ほん、とに……?」

また、来てくれるの……?私のところに帰ってきてくれる?

「あぁ……分かったな?」

瞼を閉じると、収まりきらなかった涙がこぼれる。次に目を開いた時、すでにイタチの姿は消えていた。


(サスケの治療が終わったら……帰らなきゃ)

一刻も早く、もっともっと修行して……強くならなきゃ。強くなって、そうしたら、イタチが来てくれるから。

(強く、なる……!だから待ってて、イタチ……!)





また、色が加わった


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