創造グループ | ナノ


▽ 憎たらしいくらいに


亡者の相手をしていると、微かに憂とルクリシアの会話が聞こえた。

『これで二人きり゛だな』
『うぅ……』
『さあ゛おれの願いを叶えろ゛』
『痛っ! 離して!』

憂が危ない。亡者の頭を蹴飛ばしナイフで首を掻き切る。攻撃を避けて、また避けて、足を切りつける。焦りからか少しずつ対処が遅くなっている。

『お前なら゛おれの願いを叶えられるんだろう』
『何のこと! 離してよ!』
『とぼけるな! あの男ができでお前ができない訳がない゛! さあ! 叶えろ! あの人を生き返らせろ!』
『やめて! 痛いよ!』

何を言い出すんだこいつは。誰よりもよく聴こえる耳は亡者に囲まれ、阻まれていても二人の声を拾う。イかれた頭をした奴と憂を離したいのは山々だが、こうも数が多いとなると上手くいかない。

「くそっ!!」

何体目かわからない亡者を倒したとき、ピシリと世界に切れ目が入る。ヒビは大きく崩れ人影が見えた。新手かと思いナイフを構える……がすぐさま聞き覚えがある声がした。

「ふむ。こんなところに隠れていたか」

馴染みの店に顔を出すかのように反転が現れた。

「ふふ、どうした幻影。狐につままれたような顔をしているぞ」

反転の言う通り、今、俺はとても間抜けな顔をしているのだろう。手助けが欲しい、このタイミングで、まさか俺たち創造の王をまとめる反転が来るとは思ってもいなかったから。

「反転……? あんた、どうして」
「ん? お前たちがいつまで経っても来ないからな。様子を見に来たんだ」
「そうか……。いや、待てなんでここがわかったんだよ」
「お前のナイフと憂の光が残っていた。戦闘があった証拠だろう? しかし誰もいない。足跡は倒れていた誰かの元で途切れている。つまり二人は倒れた誰かに駆け寄って、別のところに連れていかれた。そう思っただけだ。正解か?」
「……当たりだ」

指を立てて要点をすらすらとまとめる。こいつは本当に化物だな。残ったナイフと光だけで別空間にいるって、普通わかるものかよ……。

「別空間とわかれば、後は簡単だ。空間の裂け目を見つければいい」

あっさりと言ってくれるが他人が創り出した世界にこうも容易く入れるのは異常だ。いずれ憂もこの兄と同様になるのか……想像したくない。

「ふむ、これだけの世界を創り出せるとは、いい腕だ。さて、この世界の主はどこだ? 案内してれ」

呑気に世界を眺める反転に亡者が襲いかかる。

「反転!」

叫んだと同時に白い一筋の光が反転を中心として螺旋を描くように広がり駆け巡る。俺の目でも速い光は亡者を貫ぬき砕き壊していく。

「何か言ったか、幻影?」
「いや……なんでもない」

涼しそうな顔をしていた。俺でも速すぎたのだ。普通の目では何があったか把握もできないだろう。反転は一歩も歩かずしてこの場にいた亡者達を殲滅させた。やっぱり化物だ。

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