創造グループ | ナノ


▽ 初めまして小さな光


男はこちらに気づき、ゆっくりと近づく。俺と憂に一種の緊張が走る。その男が、抜き身の鉈を持ち、傍に悪魔を従えていることが目に見えたからだ。

「あぁ、おまえ゛が憂か……初めましで。小さな゛光。おれはルクリシア」

おどろおどろしい声は雪山を反響し、脳裏に届く。ルクリシアと名乗った謎の男は憂を真っ直ぐ見据えて、傷跡が残る口元を歪ませていた。

「幻影あれ悪魔だよね! なんであの人悪魔と一緒に__」

憂の言葉を聞くより先に、俺は影の中へ潜り移動をした。自らの影から繋がる樹々の影を伝い、奴の足元に広がる影へと。そして標的の影から飛び上がりナイフを振るった。

「__ッ!」
「ちっ! 足貰うつもりだったんだがな」
「……速いな。いづの間に背後へ来だ……?」
「さあな。またやってやろうか?」

意識がはっきりしてる。悪魔に乗っ取られたり、操られている訳ではない。誑かされたか、あるいは、こいつも悪魔か……。
今までの経験上から敵を推測していく。連れている悪魔は液状。形状を保てない程度ならたいした悪魔じゃない。
憂が向かってきているのがわかった。それならば──

「憂! この悪魔たちはたいしたものじゃない!一人でできるな!」
「! うん!任せて!」

こちらの動きとともに悪魔達が襲いかかる。液状の悪魔は得意のナイフも幻術も効き辛い。魔法の光を使う憂に任せるほうが効率的だ。
影へ潜り悪魔を通り越す。またしても奴の影から外へ出てナイフを振りかざす。今度はナイフと鉈が勢いよくぶつかる。刃物が弾け合う高い音は辺り一面に響く。

「ちっ……」
「あ゛あ……強いな……」

ここは森を抜けたところ。ひらけた場所で影が少ない。影を操る俺の力は半減する。早々に終わらせたいところだ。こいつは二振りの鉈を持つ。動きを予測しろ。目を凝らせ。次の動きは____俺の首だ。

「遅い!」

背を屈め、それを避ける。二振りめの鉈が脳天めがけて垂直に降ろされた。頭か首しか狙わないのか、単純な奴め。こちらのほうが早い。身をかがめて足元を掬い転ばす。新雪だからダメージはないが充分だ。即座に幻術を使い、足元の雪を氷結し手足を拘束させる。

prev / next

[ back ]



4 / 5



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -