▽ 初めまして小さな光
「捕らえた!」
「ぐっ……」
拘束に成功したところで憂が声をあげた。
「幻影! それ以上はダメだよ!」
「わかってる! それより、そっちは終わったのか!」
振り返ると肩で息をする憂と悪魔の数だけできた光の塊を確認できた。初めて戦ったときと比べて随分と強くなったものだ。
「うん、大丈夫! どうにか、終わらせたよ」
「そうか……」
息を整えた憂が俺とルクリシアを交互に見る。
「ねえ、この人どうするの?」
困っているのだ。憂にとっては初めてのケースだ。
俺たち王は、願いを叶える光を守ることが仕事だ。悪魔はその光を求める傾向が強い。感情の塊でしかない悪魔が光に触れると、願いが歪んだ形で叶い、悪魔の元となった感情に合わせて世界が変わってしまう。……過去に何度か事例がある。一番新しいのは八年前、願いが叶い世界が沈んでしまうのかと思うほどの豪雨が起きた。あの大事故を再び起こすわけにはいかない……。
悪魔なら退治して、それで終わり。だが、人間が一番難しい。時々、悪魔に唆されたり、操られたりする人間もいる。当たり前だが殺すわけにはいかない。かと言って野放しにする訳にもいかない。基本は警備団隊や専門の機関に引き渡して処罰してもらうのだが……こいつはそのどちらでもない。確実に自分の意思を持って悪魔とともにいる。……とりあえず、城か、警備団体のどちらかに連れていくのがベストか……。
「参ったな……」
「どうする……私の光を固めて動けなくする?」
「それしかないな。この雪道を運ぶのは苦労する。気絶させた上での拘束だな」
「……物騒だね」
「仕方がないだろ。大人しく運ばれてくれるとは思えないしな」
「それもそうだよね。じゃあ、やってみる」
憂がルクリシアの元へ歩み寄る。誰にでも優しいところは美点だが多少改善しないとな……。
「ごめんね。少しの間大人しくしてね」
しゃがみこんだ憂がルクリシアの腕に触れようとした、瞬間、拘束されていたはずの手が憂の腕を掴んだ。しまった!
「え!?」
「ようこそ。おれ゛の世界へ」
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