創造グループ | ナノ


▽ 初めまして小さな光


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「幻影ー!早くー」
「はいはい。その辺は雪が深いから気をつけろよ」
「はぁーい!」

憂が手を振っては、いつも以上に雪の中を飛び跳ねている。今日は王たちが集まる定期報告の日で、森を降りてすぐ目の前にある古城へと向かっている。久しぶりに反転に会えるのが本当に嬉しいんだな。初めて会った時も思ったが、憂は薄着が多い。寒くないのが不思議だ。白の柔らかいシャツに、膝よりも少し長い紺色のスカート。腰についているリボンがひらひらと揺れている。防寒は少し厚めの生地のケープくらいだ。兄同様、そういった感覚が鈍いのだろうか。まあ、他の地域はここほど寒くないから、それくらいが丁度いいのかもな。寒いのが嫌いな祝宴が今の憂を見たら、信じられないとか言うな。

「ねぇ幻影! みんな元気にしてるかなー? 私はお茶会に行ったから一ヶ月ぶりだけど、幻影は四ヶ月くらい前だよね?」
「ああ、そういえばそうだな」

定期報告会は二ヶ月に一度。後は不定期で茶会や旅行があったりする。俺は一ヶ月前の茶会と四ヶ月前の報告会には都合が合わず、参加しなかった。他の王たちと顔を合わすのは久しぶりだ。……あ、そういうことか。憂が俺の家に来たのは四ヶ月前。俺が参加していないとき。このときに憂を俺に押しつけることが決まったのか。などと余所見をしていると、憂が立ち止まっていることに気づかず、危うくぶつかりそうになる。

「おおっと……どうした?」
「ねえ、幻影?ここってこんなに静かだったっけ?」

憂はちょっと困惑したように首を傾げた。そういえばそうだ。森を抜けつつあるとはいえここはまだ唄う森。動物はともかく妖精が惑わす唄__風の音がするはずだ。それが全く聞こえない。つまり近くに悪魔がいる、ということだ。悪魔は人の負の感情から生まれる。生まれた悪魔は自身の元となった感情に従い、周囲へと影響を及ぼす。感情が強いほど影響力は強く、時として人を誑かし、死を招く。だから俺たち王は悪魔と戦う。
しかし、ここは人が滅多に来ない。悪魔が出現すること自体が珍しいはずだが……。周囲を見渡すと、樹々が不自然に切られ、腐食しているのを見つける。

「これ悪魔の仕業かな?」
「そうだろうな。……いや待て、あそこに誰かいる」

普通の人間よりも圧倒的に視力がいいこの目はこういった時に役立つ。瞳孔を細めて見つめる。

「んーよく見えない」
「男だ。あいつ、見覚えがあるな……あの服はカンタレラの騎士だ。国の騎士がこんな森に何しに来たんだか」
「迷子かな?」
「どうだろうな。この樹々があの男の仕業の可能性があるからな」

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