はぁはぁと息切れを起こしながらひたすら走る。
周りは古びた廃墟の様な学校の中の廊下を私は走っていた。
足元で倒れて死んでいる人を踏みつけ、転びそうになりながらも足を動かす。
私の背後から人ならざる者が追いかけてくるからだ。
「っもういい加減覚めてよ!!」
声を荒らげて夢が覚めるように願うけれど、今日の夢は中々覚めそうにない。
いつもなら起きようと思えば起きれるから、こんなホラーな不気味な夢でも平気だった。
それが段々と目覚めるまでの時間が延びていき。
今日は中々覚めそうにない。
この不気味な学校に閉じ込められて何日経ったのか分からない。
逃げ出そうにも窓は開かないし、夢の中だから空を飛んで逃げたいのにそれも叶わない。
開いている教室を見つけては逃げ込み息を潜める。
どうしてこうなった??
埃や汗、そして死体を踏みつけた時の血で汚れた体を見下ろす。
夢の中だからお腹は減らないのが救いだけれど。
化け物を倒す方法も見つからない。
助けてくれるお助けキャラとも出会わないし、踏んだり蹴ったりだ。
こんな夢を見たのもホラーゲームや映画の影響なのかな?
本当に夢ってつくづく理不尽だ。
見たい夢や会いたい人は中々出やしないのに、こんな化け物は出すんだから。
化け物萌えとかないし、せめてかめはめ波とか撃てたら良かったのに、試して見たものの出なくて慌てて逃げた。
逃げるだけしか出来ない夢って本当に嫌いだ。
化け物が通り過ぎるのを息を殺して待つ私の後ろで、不気味な影が現れた事も気付かず外の様子を伺った。
「…ふぅ、どっか行った…」
化け物は私の隠れていた教室を通り過ぎ、物音を立てながら去っていった事に胸を撫で下ろす。
この教室の窓も開くか試して見ないと。
開いたら空飛んで逃げよう。
そう思い後ろを振り返るとそこには全身が真っ赤な人が居た。
大きく笑った表情の口元はギザギザの歯の形をしているし、目の色も赤く人間では無い事は一目瞭然。
また新しい化け物でも出た??
やばい早く逃げないと…。
目の前のドアを開けようと手を伸ばすと、その手を押さえられて開けれなくなってしまった。
「御機嫌ようお嬢さん、そんなに怯えてどうしたんです?」
思ったよりも友好的な言葉を投げかけられて私は目を白黒させた。
「いや、あの夢から覚めれなくて困ってます。あの、貴方は誰?」
夢の中の住人にそんな事を言っても仕方がない事だけど、気が付いたらそんな言葉をかけていた。
「それはそれはお困りのようですね!私の名前はアラスター。ラジオ・デーモンとも呼ばれているよ!お嬢さんは夢に取り憑かれているようですからね〜!覚めることはないと思いますけど?」
「え、覚めることがない??」
「はい、そんな嘘をついた所で仕方がないではないですか〜!貴方が助けを求めるならば私が助けてあげても良いですけど?」
「どうされます?」なんて手を取られて面と向かって言う人物は楽しそうに笑った表情をしている。
「助けてくれるの?」
「ええ!貴方がそう望むのであればこの夢の世界から今すぐ出させる事も可能ですが?」
そうくるくると踊るようにステップを踏まれて私も釣られてステップを踏む。
変わった人だけど私を助けてくれるなら助けを求めるのもいいかもしれない。
どうせ夢なんだし。
覚めないとか怖ことを言われたけど、きっとそういう夢なんだ。
「…私をここから出して」
「契約成立です!ならさっさとこんなつまらない場所出ましょうか」
カツンと持っているマイクを地面を叩くと男の影が私諸共包みこみ視界が黒く染められていく。
男は怪しげに私を見ながら笑っていた気がするけど、きっと見間違いだ。
「地獄にようこそ名前」
−−−−−−−
彼女を見かけたのは夢の中でした。
私が見ている事を彼女は気付かず、夢の世界を歩き回っているのを何日も見る事になり、彼女に興味を持つようになった。
何故彼女の夢を見るのだろうか?
彼女の名は名前。
いつかの夢でそれを知った。
夢の世界を冒険する彼女は何時しか夢に囚われそうになっていった。
彼女の魂が美味しいそうだから狙われたのかも知れませんねぇ。
私は逃げ回る彼女を様子見つつ気まぐれに手助けを出したりもしたが、私の姿が見えない彼女は気付くことがなかった。
何日も日にちが経ち、私も夢の中の彼女に接触する事が出来た時は胸が踊りました。
やっとこの魂を物にできる。
「私をここから出して」
彼女からその言葉を聞いた時、ついいつもより笑みが零れてしまいましたが、無事に私の物にする事が出来たので良しとします。
「地獄にようこそ名前」
生きた人間が地獄に来るなんて、きっと面白い事になるに違いません!
これからが楽しみですね。
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