「君の事が心配なんだ!」
デルビルは唸る。
「一緒にきて、ジョーイさんにみてもらおう!大丈夫!大丈夫だから!…じょ、ジョーイさんってのは!お医者さんだよ!…お医者さんは…その…み、みんなの痛いとこを治してくれる人だよ!」
僕は何を言っているのだろう。デルビルが唸るのをやめて僕のことをじっと見ている。…まさか通じたのだろうか。
「…あー…あの。その。だからついてくるか…このボールに…」
『君、私達と接した事あまりないでしょ。』
「…そうなんだよね。僕まだトレーナーじゃなくて…。…。」
『けほっ…。放っといてよ。別にヒトに危害加えたりしないから。心配とかいらないから。』
「…しゃべ…」
『伏せて!』
デルビルは僕に驚いている暇を与えてくれなかった。慌てて伏せると、僕の頭の上を凄まじい勢いで何かが掠めていったような感覚がした。振り向くと、確か…デルビルの進化後の姿…ヘルガーが公園の入り口側にいた。ヘルガーはヘルガーなんだけど、僕が図鑑で見たものと違って、身体の色が鮮やかな青色をしていた。
「あ、あのヘルガー青い!」
『なにぼやっとしてるの。けほ…早くここから離れなさい。…私がアレを食い止めるから。』
「でも…君具合が良くなさそうだから…」
『…ふん…トレーナーなら頼ろうと思ったけど…ただのヒトならどうでもいいわ…。』
そう言うとデルビルは僕の傍から飛び出した。合わせて青いヘルガーも地を蹴る。
二頭の力の差は素人目で見てもはっきりとわかった。やはり進化後であるヘルガーは強い。デルビルが飛びかかろうとするのをかわさずに、ヘルガーはそのまま押し切る形でデルビルの首元に噛み付く。そして怯んだところを顎の力だけで持ち上げ、地に叩きつける。デルビルが無理矢理ヘルガーの牙を逃れようと足を踏ん張り後ろへ引こうとすれば、ギリギリ逃れられるように力を緩める。わざとだろうか。デルビルがなんとか牙から抜け出すも、その首には牙が食い込んでいた場所から伸びた痛々しい傷が残っている。完全に遊ばれているんだ。
「デルビル!ダメだ!一緒に逃げよう!」
デルビルは一度こちらに視線を向けるが、直ぐにヘルガーへ向け直す。咄嗟にモンスターボールを投げるも、ヘルガーの体にに当たってしまった。…ボールが反応せずただ地面へ落ちる、ということはトレーナーがいるんだ。ヘルガーはボールが当たったことは完全に無視してデルビルを睨んでいる。デルビルは低く唸るとまたヘルガーへ飛び掛る。これじゃあ同じ事の繰り返しだ。
「も、もうやめろお!!」
思いもよらずとても情けない声が出た。
そして僕は足元の雑草を足でかき回し柔らかい砂があることを確認すると、雑草ごと毟り掴んだ。