あのデルビルはとても賢いのではないだろうか。僕はあの一件以来そう思うようになった。時々子供を避けるのは、たぶん顔の位置が低い子供に煙がかからないようにするためだ。あと、元々トレーナーがいたのかもしれない。僕がいうのおかしいけど、野生とはなんだか違う雰囲気がする。人間のことをよく見て行動しているように見える。

デルビルを心配してか、通りすがりの人たちもオレンやオボン、ラムの実を与えたりしている所をよく見かけるようになった。でもデルビルの咳が治る気配は無い。それどころか日に日に弱っているようにも見える。僕は…僕も密かにデルビルを捕獲する決意をした。

ところが、決意した日を境に僕はデルビルと全く出会えなくなる。来る日も来る日もデルビルを捜しては見つからず帰る。よく見かけるトレーナー達と連絡先も交換した。協力して探すも全く見かけず、遂に一ヶ月が経過しようとしていた。生きているのだろうか。街での目撃情報もなく、仲間達が弱音を吐き始める。僕も暗い気持ちだけがじわじわと沸き始め、溜息ばかりつくようになっていた。

僕が捕獲を決意してから28日目だった。偶然火事の現場に出くわし、そこでデルビルを見かけた。喜びの余り近付きそうになり、火の粉が顔に当たって慌てて引き下がる。燃えていたのは大きな一軒家。一階の炎が二階を飲み込みそうなくらい大きい。まだ消防隊は来ていない。既に人集りができてきているから、通報済みだろう。あのデルビルは裏口で燃え上がる火柱を貪っていた。火、食べるんだ…なんて呟いて呆然として見つめていると、ぐいと腕を引かれて「危ないからここから離れろ!」と消防隊員のおじさんに怒鳴られた。デルビルが犯人扱いされてしまわないだろうか。まさか、犯人なのだろうか…。僕は不安なままその場を離れることとなった。


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