この狭い建物に伸びた、たった一つの廊下。その両脇いくつかある部屋の中の一番手前の受付側。簡易的なものではあるけどこの部屋を医務室と呼んでいる。ヒヤマというオニゴーリが時々ここへ来て、怪我をした救助者などの手当てをしてくれている。今日も彼が居てくれたから助かった。ああいった怪我人は滅多にいないから、ヒヤマがいなかったらギルドが大騒ぎになっていただろう。その事を考えるだけで僕は身震いした。親方のいないこのギルド。これからもこんな感じで大事が起きて行くだろう。大きな判断を迫られるだろう。そんな時僕らは…

「マタ、そんな怖い顔してどうした」
「…わ、わっ!」

いつの間にか医務室の前まで来ていたようだ。ヒヤマが引き戸の隙間からこちらを見ている。考え事ばかりしてちゃだめだな…。

「ああ、あの子のことか。」
「そ、そ〜なんです〜。大丈夫とは聞きましたが〜…僕が〜見た時は〜種族すらよくわからない状態で〜…心配なんですぅ〜…」
「…アギルダーだね。女の子だよ。歳は君とそう変わらないくらいかなぁ…」
「へ、へぇ〜。入ってもいいかな〜?」
「大丈夫だよ」

戸をそっとスライドしようとするが、建て付けが悪く相変わらずガタガタと音を立てるしとても固い。だからいつも隙間を開けたままにして、中の確認だけはすぐできるようにしているんだけど…これもなんとかしないとだよなぁ…。ヒヤマはベッドの横へ椅子を二つ並べていて、その内の手前側に座っていた。一つは先程レモニカが使っていたものだろう。僕はその空いている方へ腰掛ける。

「わー今度は白いイーブイが来たよせんせー」
「彼はマタと言うんだ。このギルドの受付をしているよ。」
「へー。そーなんだ。悪いねぇ、お邪魔しちゃって」
「い、いえ〜…大丈夫ですよぉ〜」

担がれて来た時はどうなるかと思ったけ…

「申し訳ないんだけど、暫くお世話になるから!よろしく!」
「へあっ!…えっ?は、はい〜」
「だいたいが打ち身と切り傷なんだけど、彼女中でも足をこっ酷くやられていてね。最悪もう足は…」
「あは〜は〜!なんかぼこぼこにされちったー!」
「あの…君は〜…どうしてリンチなんかに〜」
「覚えてない!」
「ええ〜!!」
「まぁいいじゃん!なんなら仕事も手伝うからさっ!な!」

アギルダーはへらへら笑う。まったく。僕らがどんなに心配したか…。…。でも素性のわからない奴を軽々しくここに置くわけにはいかない。ヒヤマは町の信頼があってここに来ている。臨時メンバーのクーシンとコティトゥも実力を認められている。ギルドの為にも…僕がしっかりしなければ…


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