▼2012/07/05

イギーとマチキが殴りあういつもの光景。
突然現れたそのヒンヤリとした大きな手は、二人の腕をがっしり掴んで離さない。

「喧嘩よくない…!」

変わった形のヘルメットを被った長身の男?
その無理やり低く出しているような声は、彼を男と断言することに疑問を持たせた。
仮に彼だとして、彼の背負ったリュックサックから伸びた二本の大きな腕。透明でやわらかく、でも力強い。力にはそこそこ自信があったマチキも、抵抗することをやめている。

何事かと駆けつけたロイテとナユタ。
ナユタが驚いて言う。
この子はイッシュのポケモン、ランクルス…!

イギーとマチキは口を開いたまま動かない。
二人は目線でお互いが言いたいことを確認する。

「…言わないほうが…よさそうだぜ」
「…」

マチキは無言で頷いた。

男はオズロットと名乗った。
自分はランクルスのコスプレトレーナーなのだ!とジャケットのポケットに手を突っ込みながら言った。

それからというもの、オズロットとランクルスは夜な夜なイギーとマチキの間に入り邪魔をした。
毎回ナユタにハイエナされてしまい、ストレスがたまりに溜まったイギー。

「…ああああ!!もう!お前を盗むぜ!!」

ついにイギーはその日も邪魔しにきたオズロットを縄で縛り、さらっていった。
呆然とするマチキを残して。


イギーの隠れ家まで連れてこられたオズロット。
何故こんなことをするのかと問うイギー。

「ずっと見ていた。ずっと憧れていた。でも喧嘩はよくないと思った。」

オズロットは土下座しながら言った。

「もう喧嘩はしないでください。お願いします。お願いします…」
「違う。そういうことじゃないんだぜ。」
「…」

ラステンがどういうこと?と訊く。
イギーはオズロットを見つめるが、彼は頭をあげようとしない。

「取れよ。ヘルメット。」

オズロットはゆっくり起き上がり、ヘルメットをとる。
そこにあるはずの頭はなかった。

そしてどこからか、ふー…とため息が聞こえた。


しゃべっていたのはオズロットではなく…ランクルスの方だった。

驚くラステン。
ランクルスがリュックからふわりと浮き上がり、いつわかったんですか?と訊く。
会った時から、マチキも気付いているはず、とイギー。

「…ワタシのトレーナー、ずっと見ていたです。あなた達のこと。かっこいいけど、喧嘩はよくないなあって言ってたです。だから自分もコスプレして止めたいって。
ワタシのトレーナー、とっても器用なんです。この服も作ったです。あと帽子もあるんです。いつか一緒に旅して、一番になるって言ってたです。」

もういないんですけどね…。と小さく付け加える。

そのままランクルスは嗚咽を漏らしながら堰を切ったように話し出す。
自分と仲良くしてくれた裁縫好きの少年のこと。
彼の為に人間の言葉を勉強したこと。
彼がコスプレトレーナー達を病室の窓から見ていたこと。
苦しみ泣いていた彼の最期のこと。
自分は追い出されてしまったこと。

そして彼ができなかったことを自分が全部やろうと決めた日のこと。

イギーはランクルスの頭を撫でながら言った。

「言いたかったのはそれで全部か?」
「…うん。」
「……あれは喧嘩なんかじゃないぜ、訓練だぜ。あいつはただ相手がほしいだけ。だからもう止めなくていいんだぜ。はい!一個完了。次は何をするんだぜ?」

ーーーーーーーーーーー
そんなわけでイギーはランクルスをあずかることにしました。
ついでに色々協力することに。

ぶっちゃけ超能力があれば盗みが楽になるぞ!と思ったからだけどねw

オズロットの正体はただのトルソーなのです。
自分のトレーナーが愛用していたトルソーとマネキンの腕や足、ヘルメットを操り、1人の人間のように見せていた。
腕は操るより自分の腕の方が強いから、ずっとポケットにイン。

イギーもマチキも目には見えないものの方が見やすいので、オズロットが人間じゃないことはすぐに気付きました。でも、そういう姿で人前にでている以上なにか理由があるのじゃないかと、だまっていることにしました。

メメントというのがランクルスの本名。
彼が遺した帽子をかぶって、彼ができなかった"一番になる"を実行するのです。


#timg#1

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