春の訪れを感じる暖かな陽気。
寒さが和らぎ市中見回りも幾分か楽になってくる。

見回りの途中で灰皿を見つけた。
咥えていた煙草もそろそろ短くなっていた。
ゆっくり一服するのも有りかと懐からタバコの箱とライターを取りだし火をつける。


スパーっと吐き出してはくわえの繰り返しでなんとなく心が落ち着いてくる。
上司、部下のやらかす事を忘れられる至福の時間。



……のはずだった。
目の前から見慣れた銀髪が現れる前は。




「お、多串君じゃない。仕事サボって一服ですか? ったく公務員は給料の心配が無くていいよなァ」

「うるせェ、朝から休んでねーんだから一服くらいいいだろうが」

会って直ぐに突っかかってくるこの男に腹が立ち、睨み付ける。



「まぁまぁそんな怖い顔しないでー。 普段ならもっとあれこれ言うところだけど銀さん今日は機嫌いいからここでやめといてやるから。あとコレやるよ」


そう言って俺にパチンコ屋の景品らしき菓子を差し出してくる。


「……今日は勝ったみてーだな」


「そりゃもう凄かったぜ、玉が止まんねーだもんよ!」

子供のように無邪気に語る銀時。
内容は無邪気でもなんでもないんだけど。


「んで土方くん、折角俺の菓子やったんだからなんかお返しくれてもいいよね?」



「はあっ?テメェは見返りを求めないとそういうことできねーのかよ…」


半分呆れながらも相手が何を指定してくるのかをじっと待つ。

銀時が俺を指差してくる。


「それそれ、そのタバコくれよ」

銀時の手が自分の顔の方に伸びてくる。
そしてそのままタバコをつまみ、俺の口から抜き取るとそのままくわえた。


「なっ……!」

驚きが隠せない。
こいつがタバコを吸うなんて思わなかったし何より吸いかけをそのまま吸われた事にだ。


しかしそれがとても新鮮に思えてそれをふかす銀時に釘付けになっていた。


「んー、やっぱあんまうまいもんでもねぇな……」

元から短かった事もあり三口ほど吸って灰皿へと投げ込まれるタバコ。


「お前タバコ吸ってたのか?」

「昔にちょっとだけね。今は家にガキもいるし吸ってねぇよ」


そういうところを気遣うのもこいつらしいというか。

「いい父親やってんだな」

「誰がチャイナ娘と眼鏡の父親だ! ……ま、大切にしねぇとな」


こいつにとって万事屋がどれだけ大切な物かというのがわかる。


「ホントに大切に思うならパチンコも止めとけ」


懐からタバコを取りだし火をつけ歩きだす。
後からギャーギャー聞こえるが無視して歩く。
自分はいつから吸ってたか?
なんて事を考えながら見回りに戻る。














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友人がネタをくれました。
攘夷の時タバコ吸ってた銀時

万事屋には子どももいるし、っていいお父さんしてたらいい








20120429
あずま、



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