ハリ男 | ナノ

新入生達の間に漂う隠し切れないそわそわした感じを出すことのできない、精神年齢の無駄に高い俺です。これから始まる組み分けに期待と少しの不安で浮き足立っているんでしょう。新生活に対するドキドキわくわく感などこれっぽっちも感じない俺は浮いております。ごめんね、若くなくて。いやそれ以前に俺の場合、大体の学校生活について知ってるからね。これからの学校生活が如何に荒れるのかとか波乱万丈に満ちているのか、とか。知っててドキドキわくわくできる兵がいるのならぜひお目に掛かりたい。少なくとも俺みたいな小市民は無理です。ドキドキわくわくって言うよりはドキドキびくびくです。

「ハリー・ポッター!」

はいはーい、なんて返事できる雰囲気じゃなかったです。バッて音が聴こえるくらい俺に向かって視線が集中したのがわかった。痛い痛い、視線が痛い。幾ら有名らしいハリー・ポッターだからってさ、そんな見なくてもいいじゃないですか。視線で殺されてしまいそうですよ。
一挙一動でさえがん見されてるのって意外と辛いのですね。両手両足がぎこちない動きで椅子へと移動する。やっと組み分け帽子を被ったときには、目元まですっぽり覆いかぶさった組み分け帽子のお陰で視線から目を逸らすことができて安心さえしたほどだった。

「おや、これはこれは。ハリー・ポッターじゃないか」
「…俺のこと知ってるの?」
「あぁ、勿論だよ。運命の子。君の両親のことも知っているさ。二人共素晴らしい生徒じゃった」

へぇー、そうなんすか。としか言い返せない。って言うか、こんなのんびりと雑談していてもいいのかなと少し疑問に思った途端、組み分け帽子が「いかんいかん、君の入る寮だったな」と言い出したので正直びびりました。
え、何、この帽子ってもしかして人の思考が読めたりするの?そう言われれば、人の資質を見て寮に振り分けるんだよね、この帽子。資質ってどうやって判断してる訳?人の思考とかから、だろうか?五分以下、思考を除いただけで資質がわかっちゃうんだとしたらこの帽子はとんでもなく優れた心理学者になれるんじゃないだろうか。それに、そもそも、だ。どうやって思考を除いている訳?やっぱりあれだろうか、その人物の脳波と同じ脳波にすることによって同調、とか?
グリフィンドール、スリザリン…。どっちにするか…。とうんうん唸ってる組み分け帽子は無視して俺は俺で思考の中に埋もれる。だって、組み分け帽子の悩みの結論は俺、知ってる訳だし。それより、組み分け帽子の人の資質を判断している能力のことだよ。そんな魔法みたいなことができるのか?…あ、そっか。ここって魔法が存在する世界だった。普通に魔法なのか。

なんて馬鹿な結論。だがしかし、気分的には目から鱗。そんな俺とほぼ同時に組み分け帽子の結論も出たらしい。

「よし、決めた!君の寮は――」

あー、はいはい。グリフィン…

「スリザリン!」



……

………え?

たっぷり三秒、呆然とした俺に「う゛おぉおおおぉおお!」という野太い歓声が耳に届いた。え、と歓声が聞こえて来た方向を見ると、何ていうことでしょう。まさかのスリザリン席からの歓声。え、貴方達貴族だか何だかの子供達なんですよね?そんな野太い声出していいの?品性疑われたりしない?
そんなお祭り騒ぎのようなスリザリンとは違って苦い物を飲んだかのように渋い顔をしている他寮生。…あっれ、何かスリザリンって言われた瞬間から好奇心の中に微かな敵意の視線が混じりだしただなんて、そんなの気のせいですよね?

…え、とりあえず、今の状況ってどうなってる訳なの?
まさかのハリー・ポッターが、まさかのスリザリン寮とか。



あはは、全く笑えん。


(スリザリン寮生からは歓迎されているようですが)


121005


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