春、と言えば花見の季節だ。
隊舎から見える桜の木々も例外なく満開に花を咲かせている。
あちらこちらで夜桜見物を兼ねた宴会が毎夜行われていた。
「修兵!!」
ひょっこりと執務室に顔を出した一人の女性。
「おお、名じゃねーか。」
どうした?、と聞いてやれば彼女はにんまりと笑った。
「お花見に行こう!!」
「花見?構わねーけどよ。」
「やった!!あのね、新しく出来たお団子屋さんの店先から見える桜がすっごく綺麗なんだって!!」
嬉しそうに話す名の姿を見つめ、ふと思う。
「お前、目的は団子だろ・・・」
「そんなことないって!!!」
顔を真っ赤にして首を振る彼女で確信した。
「で、いつ行くんだ?」
「んーとね、今日!」
桜が満開のうちに行こう、と名は机越しの修兵の方へ身を乗り出す。
「俺、早くても定時だぞ?夕方になっちまう。」
「夕方の桜ってのもいいものよ!」
「分かったよ。迎えに行くから。書類終わらせとけよ?」
修兵の声にうんっ、と返事をし、もの凄い速さで執務室から出て行った。

予定通り定時には書類を片付け名を迎えに行く。
「終わったか?」
「もちろん!!」
流石でしょ?、と名はウィンクして見せた。
「おう、行くぞ。」
歩いて十数分。
隊舎からそれ程遠くない距離に団子屋はあった。
店に着くなり名は団子を大量に注文し始める。
「お前、そんなに食うのか?」
「当たり前でしょ!!」
運ばれてきた団子は次から次へと名の胃袋へ収められていく。
小柄な体型の彼女の一体何処に大量の団子が入るのだろう、と思う。
名の云う通り、桜が綺麗に見える。
見に行こう、と言った本人は桜そっちのけで団子に夢中。
頬一杯に団子を詰める姿はリスを連想させて、思わず笑ってしまった。
「何笑ってんのさ〜」
「何でもねーよ。」
「そういえば、桜綺麗だね。」
思い出したように桜の感想を述べ、再び大量の団子を胃袋に収めていく。
やっぱり団子目的じゃねーか、と修兵は小さく呟いたのであった。

花より団子

団子より、君。



アトガキという名のいいわけ

春らしいもの、と言えば花見かなと。
こちらを相互記念として志月唯様に捧げます。
お持ち帰りはご本人様のみ可。
志月唯様へ
駄文で申し訳ありません。
全身全霊を込めて書かせていただきました。
煮るなり焼くなり、お好きになさって下さい。
この度は、相互有難うございます。
これから末永くお付き合いさせて頂ければ嬉しいです。
雪野 奏




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