今年も彼は来ないだろう。
窓から雪の降る空を見上げた。

White


近場のコンビにで買ったケーキと手作りの夕飯。
真面目に料理をしたのは久々だった。
いつもは惣菜を買い簡単に済ませる食事だが、今日は違う。
年に一度の恋人達の日だ。

名は今年も顔を見せないであろう恋人の姿を頭に浮かべた。
IT企業の社長をしている彼は忙しいのだ。

ふっと溜息を漏らし出来上がった夕飯を盛り付けるべく皿を棚から取り出す。
チャイムが鳴った。
玄関の扉を開けたがそこに居たのは花屋。
名は恋人ではないことに肩を落とした。
大して期待はしていなかった筈なのに、と心の中で自嘲する。
受け取った花束を部屋へ持って行き、宛名を見れば恋人の名。
思わず嬉しくなり、頬が緩んだ。
再び、チャイムが鳴る。
ほんの少し期待を込めて玄関の扉を開けた。
「あ…」
そこには恋人の姿。
「どうした?」
白哉は驚いた名の顔を覗き込む。
「え、いや。何でもない。」
「そうか。」
短い言葉で納得を示した白哉を部屋の中へ招き入れた。

時計を見ればまだ午後7時前。
夕飯には少し早い時刻だ。
「夕飯は?」
「まだ、だ。」
「外食にする?大したもの作ってないし。」
名はフライパンの蓋を開け、落胆する。
来る、と云ってくれればもっと豪華なものを作ったのに、と。
「いや、名の手料理が食べたい。」
「そう。」
仕方が無いので料理を盛り付けテーブルに出した。
スープとパスタとサラダ。
洒落っ気も豪華さもない至って普通の夕飯。
「どう?」
白哉は眉一つ動かさずにパスタを食している。
少しも感想が無いので思わず聞いた。
「美味い。」
その言葉にほっとする。
「そ、そう。それはよかった。」
顔には出さないが内心、とても嬉しかった。

片付けた皿を洗っていると、白哉が突然口を開いた。
「明日、予定はあるか?」
「明日は仕事。どうして?」
「久々に出かけようかと思ったんだがな。」
残念そうな顔をする白哉。
彼はなかなか休みが無いのだ。
「明日、会社休もうかな。」
「わざわざ、か?」
「そうよ?」
呆れた、と云わんばかりの顔をした白哉を見て悪戯っぽく笑った。
「いいじゃない、たまには。」
「名がいいなら。」
渋々頷いた白哉は口にはしないが嬉しそうだ。
「やった。どこに行くの?」
「何処でも構わん。」
「じゃ、考えとく。」
読書を始めた白哉の姿に名は小さく微笑んでいた。




アトガキという名のいいわけ

XmasということでXmasネタ。
現パロは久々でした。
一応、甘の予定です。






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