もしも私が死んだなら そんな私を愚かだと嗤って 「姓名以下4名只今より任地へ向かいます。」 任務前の挨拶に来た彼女は十一番隊からの移動で昨年配属された隊士だ。 ほぼ隊員が男の十一番隊にいたのだから実力はある。 書類整理もそこそこ。 美人ではあるが性格は男勝り。 飾り気の無い所が、部下の信頼を集め隊には既に馴染んでいる。 「今回の任務はかなりの危険が伴う。心してかかれ。」 「はい」 失礼します、と無表情を崩さず一礼し隊主室を出ようとする名を呼び止めた。 「姓、還ってくるのだぞ。」 「はい。もしも私が死んだら嗤ってくれて構いませんよ。」 十一番隊の誰かも云っていた気がする、と白哉は思う。 名は大胆不敵に口角を上げ出て行った。 任地で虚との戦闘が始まって1時間。 虚の数は一向に減る気配を見せない。 どの隊士も虚の相手で手一杯で増援を要請する暇などない。 (これじゃ埒が明かないッ) 額を汗が流れる。 前方から襲い来る虚に気を取られているうちに隊士が叫んだ。 「姓さん、後ろ!!!!」 隊士の声に振り返ろうとするも間に合わない。 後方の虚の拳が背中に叩き付けられる。 「かはっ」 肺から空気が抜け、目の前が霞んだ。 力の抜けた体は宙を舞い地へと落ちていく。 地面に叩き付けられる衝撃を想像し目を瞑る。 が、名の身は何者かによって抱き留められていた。 「ん?」 「姓、大事無いか?」 「隊長?」 「大事無いかと聞いておる。」 「少し死にそうでしたけど、隊長に助けられたので生きてます。」 自隊の隊長の姿に気付き、隊士達の士気が上がる。 「散れ 千本桜」 名を左手に抱いたまま解号を呟けば斬魄刀は桜の花弁へと姿を変える。 ものの一瞬だった。 あたり一面の虚が消え霊子と化す。 隊士に後始末を頼み、名を抱いたまま救護詰所へ向かった。 「あの、隊長?」 「何だ。」 「降ろして下さい、歩けますから。」 名の提案は見事に却下された。 「断る。怪我人は黙っていろ。」 恐る恐る白哉を見上げ名は消え入りそうな声で呟いた。 「あの…重くないですか?」 「丁度良い。」 名は困惑する。 「どういう、意味です?」 「そのままだ。他意は無い。」 白哉を見上げれば急ぐぞ、と云われ気付けば救護詰所の前であった。 瞬歩を使ったようだ。 診察と終えた卯ノ花は名を見て微笑んだ。 「生命に異常はありません。ですか休養をしっかり摂って下さいね。」 「ありがとうございます。」 卯ノ花の背を見送れば、白哉と二人になる。 少し間を置いて白哉が口を開いた。 「名、お前に休養が必要だそうだ。」 「らしいですね。」 「我が邸に来るが良い。」 白哉の突然の提案に名は目を丸くする。 「なぜっ!?」 「休養ならば我が邸でしかと摂るがよい。」 「あの、意味がいまいち…」 名をひょいと抱き上げ詰所を出た。 「行くぞ。」 「えと…あの、ちょ」 「行くぞ。」 有無を言わせぬと云わんばかりの白哉に名は何も云えなくなった。 「絶対に私が護る故、お前は死なせぬ。」 白哉は悠々と歩きつつ云う。 今朝の名の言葉を根に持っていたのだろう。 「あの…」 「私はお前を好いて居るようだ。」 「本気ですか?」 名の瞳が真っ直ぐ白哉を捕らえる。 「ああ。」 恥ずかしいのか白哉は目を合わせない。 「私も嫌いじゃないですよ、隊長のこと。」 白哉は一瞬目を見開いてそうか、と呟いた。 「婚礼は早い方が良いな。」 「こっ婚礼って。まだ早くないですか?」 「お前の気が変わっては困るからな。」 白哉は悪戯っぽく名に微笑んだ。 アトガキという名のいいわけ ごめんなさい((スライディング土下座 迷走してしまったwww Back |