隊舎の1階に設えられた隊の集会用の広い土間に数名の遺影が並んでいた。
先日の任務で命を落とした者たちのものである。
一通り式は終わり、隊士達は執務室へ戻っていく。
残っているのは彼等と親しかった者のみとなっている。
その中に生気を失ったような虚ろな瞳で遺影を眺める女性が居た。
「名、大丈夫か?」
名は平子の同期だ。
「しん・・・じ」
「残念やったな。」
今にも泣きそうな名を抱き寄せてやる。
「うん」
いつもなら暴れて抱きしめられるのを嫌がる名だが、今日はおとなしかった。
間も無く名は小さく嗚咽を漏らし始める。
名が見ていた遺影の男は名の想い人であった。
片思いではあったが、彼との些細な出来事を平子に嬉しそうに語っていた。
名の頭を撫でてやる。
「も、大丈夫…」
目を赤くした名は平子を見つめた。
「せやけど」
「大丈夫だから」
兎のように赤くなった瞳を見れば到底大丈夫には見えない。
平子は再び名を抱き寄せる。
先程より強く。
「真子、痛いよ。」
名は平子の胸板を押したが平子が離れることは無かった。
「なぁ、名の1番はアイツでええ。せやから、俺の1番はお前でええか?」
「何、云って…」
「俺かてお前が好きやったんやで。」
何も云えずに固まった名の耳元で平子は続ける。
「2番目でええねん。せやから、俺んとこ来ぃ。」
お前の事、支えたいんや、と。
「真子はそれでいい、の?」
「今は、ええ。」
名は平子の羽織を掴んだ。
「何でそんな優しいの?」
「お前が好きやからや。」
「真子は苦しくない?」
平子は名の頭を胸板に引き寄せた。
「アホ。お前が泣きじゃくるよりマシや。」
自分でも臭い事を云ったと思う。
だが、それが本心だった。
「俺んとこ来ぃ。」
「真子に甘えていいのかな。」
「ええ。俺がええて云うとるやろが。」
でも、と名の瞳は戸惑いの色を見せる。
それもそのはずだ。
無茶な事を云っているのだから。
「アタシ、今まで真子を苦しめてたんだね。ごめん。」
「もう、ええて。」
「ごめん。」
名は再び平子の死覇装に顔を埋めて嗚咽を漏らしていた。




今は2番目でええから。
せやからいつか、アイツの1番になる
チャンスを下さい
都合よく信じてもいない神サマに願うんや。



アトガキという名のいいわけ
17000hitを記念して平子さんです。
企画以外でサイトに上げるのはこれが初めてですがストックは何本かあります。
初がシリアスてwサーセン。






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