名の目が覚めれば朝だった。
眠りに付いた時には居なかった筈の白哉が自分を抱きしめるように眠っている。
白哉は昨晩も帰りが遅かったのだろう。
夫を気遣い起こさぬように布団から這い出ようとすると布団へ引き戻された。
白哉と目が合う。
「起こしてしまいましたね。」
「ん。」
まだ目が覚めていないようで白哉は半端な返事をする。
「今日は非番でしたね。ゆっくりお休みになってくださいな。」
私はもう起きますから、と云い布団を出ようとすれば白哉に強く引き寄せられる。
「もう少し寝るのだ。」
「えと…」
どうやら白哉は名を布団から出す気は無いらしい。
「名も私と寝るのだ。」
子供のように駄々をこねる白哉が可愛くて思わず笑ってしまった。
「何を笑っておる?」
「だって白哉さんが」
「私がどうした?」
白哉は何のことかさっぱり分からず目を丸くする。
その姿もまた子供のようだ。
「あまりに子供みたいで可愛かったもので」
名の言葉に白哉は眉を寄せた。
「私は可愛くはない。」
「可愛いですよ。」
名の言葉が全く聞こえないと云わんばかりに白哉は狸寝入りを始める。
「もう、白哉さんったら。」
狸寝入りの筈がいつの間にか白哉は寝入っていたようで目が覚めればもう日は高く昇っていた。


金鳳花

「半日無駄にしてしまったな。」
「いえ、白哉さんの寝顔を拝見できたので無駄ではありませんよ。」
穏やかに微笑む妻を見て白哉も小さく微笑むのであった。



アトガキという名のいいわけ

穏やかなのを書いてみました。
タイトルの金鳳花の花言葉は『栄誉、栄光、子供らしさ、中傷』
花言葉の子供らしさ、をイメージしました。
ちょっと可愛い白哉さんが書けた気がする。



Back