最後のページを読み終えて本を閉じた。

主人公の女性が妻を亡くした男を好きになる。
主人公がその男に告白して妻を忘れられないと断るところで作品は幕を閉じる。

人生はうまくいかないものだと思う。
現実がそうなのだから空想の世界ではハッピーエンドが見たかったような気がする。

昼過ぎの柔らかな日差しが眠気を誘う。
今日は書類が少なかったし、昼寝をしてもいいかなと座っているベンチにゆったりと背中を預けなおした。
目を閉じれば心地よい風が吹いて春の香りを運んでくる。
春眠暁を覚えずとはよく言ったものだ。
どこかの隊が演練をしているのか木刀のぶつかる音がしていた。








春の日差しが柔らかい。
隊舎の庭を歩いているとベンチでゆらゆらと舟をこぐ女の姿が見えた。
彼女は白哉の部下でよく知った顔である。
いつもなんとなく目で追ってしまう。
好意がある、と言えるのかはだいぶ怪しい。
妻を亡くした自分が他の女に好意を持つことを自分自身が許していないだけだとはよくわかっていた。

ゆっくりと近づいていくが彼女が起きる気配はない。
寝顔がずいぶんと幼く見える。
ちょっとした悪戯心が湧いて静かに隣に腰掛けた。
それでも彼女は起きない。
「姓」
呼んではみたものの彼女は起きない
呼んでも起きないところか頭を白哉に預けてくる始末。
暖かな日差しの下での昼寝は気持ちよさそうだ。
今日は書類が少ない。
ほんの少し職務に戻る時間が遅くなっても定時には帰宅できるだろう。
恋次の困った顔を拝む羽目にはなりそうだが。
今はそんなことよりも隣で眠る彼女が目を覚めた時どんな顔をするのか、それが楽しみだ。
目を閉じると春風が桜の香りを運んでいた。







アトガキという名のいいわけ

少し、というかとんでもなくセクハラじみた白哉さん。



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