そう、いつだって

一番会いたくない時に彼はやってくる

好きな人に別にかっこよく見せたいわけじゃない。
いいところを見せたいわけでもない。
けれどかっこわるいところを見せたい訳でもないのだ。

私は凡人だと思う。
普通に仕事をして、普通に生活をしている。
顔も体型もいたって普通。
ミスが多いわけでもない。
けれど、あの人は私が何か失敗したり恥ずかしい思いをする時に偶然居合わせるのだ。
いつもは見かけないのに隊舎の廊下で転んだ時には通りかかったり。
湯呑を割ったときに限って部下の執務室に来たり。
お蔭で彼の私に対する印象はドジでトロい女といったところだろう。
なんとか汚名返上したいところだが私は運悪く彼の前でいつも失敗する。
もはや不運だとしか言いようがないのだ。

不運な目に遭うのは極力避けたいので最近は接触は必要最低限に抑えている。
それでもやはり私の不運は続くばかり。
しかもまったく遭遇しない日はほぼないし遭遇しないなんてほぼ不可能だ。

だって彼は私の上司である。

昨日も書類を提出しに行き隊長に差し出した紙で手を切った挙句、絆創膏を貼ってもらった。
今日は書庫で脚立に上って資料と取ろうとしてたまたま通りかかった隊長の目の前でひっくり返った。
そして立つのに手を貸してもらい散らばった資料を拾ってもらった。
あまりにも恥ずかしくて目を見られないかったよ、もう。

なんだか自分の不運さに嫌気がさして下を向きながら歩いていると人にぶつかった。
ひっくり返りそうになった私はぶつかったその人に腕を引かれてなんとか体制を戻した。
ホント、駄目だなぁ私。
「すいません」
「済まぬ、大事ないか?」
声をかけられてハッと気づいた。
隊長だ。
「朽木隊長!!失礼しました!!」
またやってしまった。
「全く…お前は目が離せぬな。」
「もうしわけありません」
頭を下げたままの私の耳元に腰を屈めた隊長が口を寄せた。

「それ故、お前がいつも気になってしまう。」

え、と私があんぐり口を開けた時には隊長はもう歩き出していた。
僅かに見えた彼の口角が上がっていた。

これは期待してもいいのか?
彼が気にかけてくれるならこの不運体質も悪くない、なんて思ってしまうのだった。



アトガキという名のいいわけ

久々の更新で指が鈍ってしまいました。
誤字脱字がありましたら連絡よろしくおねがいします。
隊長は好きだからヒロインを軽くストーカーしてるけど彼女はそれに気づかない的な感じになってしまいました。
いや、ストーカーじゃない、と思いたい。
そこら辺は皆さんの想像で。




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