店を出た。 自邸とは反対の方向へ足が進む。 ふらりふらりと夜道を歩く。 火照った体に夜気が丁度良かった。 戸を叩けば彼女はすぐに出た。 「白哉、どうしたの?」 眼光の弱まった白哉の瞳にさては酔ってるなと名は笑う。 会いたかったのだ。 無性に顔が見たくなったのだ。 なんて言えるはずもなく何も言わぬまま彼女を抱き寄せた。 「どうしたのさ?」 名が心配そうな声を上げる。 「どうしたら良い?」 言葉を返してやる余裕はなかった。 精一杯気持ちを伝えたくて。 「どうしたらお前を護れるのだ?どうしたら傍にいられるのだ?どうしたらお前を傷つけずに愛せるのだ?私はお前を…」 言葉が詰まる。 酒の力か口がよく回ると思えば今度は何も言えなくなる。 「中、入ろうか。」 名に手を引かれ長椅子に腰掛けた。 そのまま雪崩れるように横になれば台所に水を汲みにいく名の姿が見える。 あのような言葉をぶつけたかった訳では無いのに、と思う。 降りてくる瞼には逆らえず後悔を抱いたまま白哉は眠りに落ちた。 「ありゃ、寝ちゃったか。」 名は苦笑し布団をかけてやる。 窓の外では梅の花の蕾が膨らんでいた。 翌朝、目を覚ますと味噌汁のいい匂いがした。 昨夜酒を飲んでここまで来たがそれ以降の記憶がない。 名に迷惑をかけたのでは、と思い痛む頭を押さえ台所へ向かう。 「ああ、起きた?おはよう白哉」 「ああ。おはよう」 何故だかそうしたくなって彼女を腕の中に収めた。 「まったく、どうしたのよ。」 呆れ顔で笑われる。 「昨日の私は面倒をかけなかったか?」 「大丈夫よ。」 朝ご飯にするわよ、と彼女は白哉を台所から追い出した。 朝食を済ませ名を見送る。 「非番でしょ、ゆっくりしててよ。早く帰るわ。」 死覇装をまっとた彼女の背は凛としていた。 「行ってきます。」 「ああ。」 その背を見送り食器を洗う。 手持無沙汰になったところでふと窓の先へ視線を投げると梅の花が咲いていた。 アトガキという名のいいわけ 久々の更新です。 なんとなく梅の花を絡めたくて書きました。 Back |