春の陽気を纏わせた風が舞う昼下がり。
京楽春水は隊舎の屋根で空を仰いでいた。
「春水!!」
怒りを含んだ声が降ってきて、その声の主は京楽を仁王立ちで見下ろした。
「名ちゃん、どうしたの?」
呑気な声を上げれば名は大きな溜息を付いている。
「どうもこうもないわよっ」
七緒さんに迷惑かけてばかりで、と彼女の眉間の皺がどんどん深くなっていく。
「まあまあ、そうお怒りなさんな。」
宥めるために言ったはずの言葉も彼女にとっては火に油。
京楽は襟を掴まれ起こされた。
「そういえば、また他所の女の子に手を出したって?」
「ただお茶に誘っただけだよ。」
柔らかく微笑んでみせるも効果は皆無。
「女遊びばっかりしてる男に興味無いわ。」
突き放すように襟を手放し名は隊舎へ戻ろうと身を翻した。
「待って。」
京楽は彼女の手を掴み引き止める。
「離して。」
「待ちなさいって。」
強引に名を腕の中へ収めた。
「春水なんて知らない。」
今にも泣き出しそうな顔をしている名を見て罪悪感が湧いてくる。
「ご免よ、君を泣かせたかった訳じゃないんだ。」
京楽は強く名を抱きしめた。

僕だけを見てて

(君が素気ない態度ばかり取るから困らせてみたくなったんだ)(バカ、もう許してあげないから)



アトガキという名のいいわけ

京楽さんて多分こんな感じ。



Back