「白哉さん?」
元々口数の多い方では無い夫だが、いつもは返事をしてくれる。
けれど今日は違う。
此方を向きはするものの、声を出そうとしない。
何やら口を開くが声を出さずに閉じてしまう。
「もしかして、声が出ないのですか?」
白哉はコクリと頷いた。

四番隊へ連れて行くと過労から来るものだろうと言われた。
「白哉さんは頑張りすぎなんです。今日が非番で良かったですね。」
部屋の隅に白哉を座らせ、布団を敷きながら名の説教が始まった。
残業のしすぎたとか、睡眠時間が足りてないとか。
「働くな、とは言いませんが程ほどにして下さいね。」
白哉の着替えを手伝い、布団に寝かせながら溜息混じりにそう云った。
「とりあえず一眠りして下さい。たまに様子を見に来ますから。」
部屋を出ようと立ち上がった名の着物の裾を引っ張る。
「どうしました?」
再び座り、心配そうに白哉の顔を覗き込んだ名に口付ける。
「もうっ!!」
怒ったような困ったような声を上げた彼女は顔を真っ赤にして部屋を出て行った。
照れた妻もかわいい、と惚気たことを考える白哉であった。

目が覚めたのは夕暮れだった。
横では名が寝息を立てている。
枕元にあった上着をそっとかけて額に口付けをした。
自分の身を案じて傍に居てくれたのだろう。
「ありがとう」
今日一番の声は酷く掠れて情けの無いものだった。
名には勿論聞こえていない。

声無きこえ

彼女が起きたらもう一度、きちんと云おうと思う。



アトガキという名のいいわけ

珍しく体を壊した白哉さん。
無理が祟ったんでしょう、って感じ。
彼にはあまり無理はして欲しくないです。




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