通り雨に降られた木々は一層色を濃くして、変わらず上を向いていた。
「雨やんだね。」
窓の外へ視線を放り出し、空を見る。
黒い雲の隙間から光が零れていた。
久々に重なった非番。
「出掛けるか。」
たまには二人で出掛けるのも悪くなかろう、と名を見た。
「何処に?」
「何処でも良い。」
「目的地無し、か。」
悪くないね、と彼女は笑った。

先程までの雨空とはうって変わって街へ出た頃には晴れ渡っている。
「暑いね。」
手で首元をパタパタと扇ぐ。
「夏だからな。」
「そうだね。」
手、繋ごうよ、と名は気恥ずかしそうに言った。
「暑いのではなかったか?」
意地悪く言ってみれば彼女はニッと口角を上げる。
「それとコレとは別問題。」
自分の手を握った小さな手を握り返す。
この小さな手で、このか細い腕で刀を持つのかと思うと何とも言いがたい気持になる。
「どうかしたの?」
「いや、何でもない。」
「そう?ならいいけど。」
名が気になった店に入り雑貨や文具、飾りを見てまわった。
少し休憩、と二人は土手に腰掛けた。
何でもない日常を愛おしく思う。
「平和、だね。」
「ああ。」
「私達が守ってきたんだね。そしてこれからも」
守っていく、と続けた名の瞳が微かに揺れる。
「ああ。」
「もっと強くならなきゃいけないね。」
「そう、だな。」
彼女はこれ以上、その背に何を背負うと云うのか、と思う。
自分が知る以上に多くのものを背負う彼女がその重みで崩れてしまわぬよう支えたい、とも。
「白哉、ありがとう。」
「礼など云われる様な事はして居らぬが。」
「そうだね」
夕日を見据える瞳が柔らかく微笑んでいた。
「名」
呼び慣れたその名は舌に心地よい。
「名」
もう一度、確かめるように。
「なに?恥ずかしいんだけど」
彼女は困ったように笑う。
その姿が愛おしくてそっと口付けた。
「恥ずかしいってば」
彼女はまた困ったように笑った。

あいじょうひょうげん

言葉なんて必要ない位、精一杯の愛を捧げよう。



アトガキという名のいいわけ

なんかこう、空気で伝わる愛みたいな物を書きたかった。
書けてないけどね(笑)



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