彼女は俯いていた。
「お茶どうぞ。」
「ありがとうございます。」
いつもなら満面の笑みを浮かべる彼女は此方を見ようとはしない。
「退屈・・・スか?」
「え?」
喜助の言葉に弾かれた様に顔を上げる。
「なんか浮かない顔してますよ?」
「そんなこと」
「ならいいんスけどね。」
ちょっと考え事を、と名は申し訳なさそうに微笑んだ。
「あんまり難しい顔をしていると可愛い顔が台無しだ。」
「可愛くなんてないですよ」
私なんて、と彼女は再び俯く。
あまり人付き合いを得意としなさそうな、控えめな女性。
そう思っているとなかなか芯の通った意志の強い一面を持つ。
一緒にいて飽きることが無いな、と喜助は思う。
「名サンはアタシが嫌いスか?」
「嫌いじゃない、です。」
ほんの少し驚いた様な、躊躇う様な間を残したその言葉。
「じゃ好かれてると受け取っても?」
彼女は視線を泳がせ、頬を赤く染め小さく頷いた。
「じゃあ両想いだ。」
彼女の戸惑った視線が喜助の視線にぶつかる。
これからは恋人ってことで、と喜助がおどけた様に笑えば彼女の視線はまた落とされた。
「名って呼んでもいいスか?」
「はい」
「アタシの事も喜助って呼んで下サイ。」
小さく頷いた彼女は喜助を見た。
「喜助さん。」
「喜助でいいっスよ。」
「喜助・・・好きです。」
躊躇いがちに紡がれた言葉に愛おしさを感じる。
「アタシも名が好きです。」

精一杯の愛を
君に捧ぐ。




アトガキという名のいいわけ

久々に浦原さん。
ぎこちない感じを出したかった。


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