苦虫を噛み潰す、とはよく言ったものだと名は長椅子から恋人を眺め内心苦笑した。
「もう少し嬉しそうな顔をしたらどうなんだ。」
声を掛ければ書類を厳しい顔つきで見ていた白哉が顔を上げる。
「私は忙しいのだ。用が無ければ話しかけるな。」
バッサリと名の言葉を切り捨て再び書類へ目を落とす。
「つれない奴め。」
小さく呟けば白哉は煩い、とだけ云った。

今日は白哉の誕生日だ。
屋敷には何かと縁のある貴族達が祝いだと挨拶やら贈り物やらでやって来ているであろう。
白哉はそれらから逃げるべく隊舎で仕事をしているのだが、隊舎でも部下達からの贈り物が絶えず執務室前には沢山の贈り物が積まれている。

白哉は大きく息を吐いた。
「お茶でも淹れてやろうか?」
暇を持て余し声を掛けてみる。
「ああ、頼む。」
給湯室でお茶を淹れ盆に乗せて持っていく。
「少し休んだらどうだ。」
執務室に戻った名の言葉で、漸く白哉は筆を置き名の横に腰掛けた。
「なあ、耳貸せよ。」
「何故だ?」
「いいから。」
白哉の頭を引き寄せ、懐からある物を取り出す。
「動くなよ?少し痛いかも。」
一体何なのだ、と白哉が呟くと同時にパチンと何かを挟む音が響いた。
彼女の手にあるのは現世のピアッサーと云う道具だ。
鈍い痛みの後で白哉は自分の耳に何かが貫通したことに気付いた。
「よし、と。もういいぞ。」
名は満足げに頷いている。
「名。」
「何だ。」
「一体何をした?」
不思議な顔をする白哉に名は自分の髪をかき上げ耳を見せた。
そこには真っ赤な飾りが付いている。
「それは何だ。」
「ピアスだよ。白哉にもつけたんだ。」
懐から出した手鏡を白哉に向けた。
彼女と同じものが、付いている。
「揃いか。」
「ああ。白哉に何渡していいか分かんなくてさ。」
名は気恥ずかしそうに俯いた。
「これなら戦闘時にも邪魔にならずに済むな。」
俯いた頭を抱き寄せる。
「よ、喜んで貰えたか?」
心配そうに自分をを見上げる恋人。
「無論だ。大切にしよう。」
「そうかっ!!」
嬉しそうに目を輝かせた名に口付けを落とした。





アトガキという名のいいわけ

白哉さん、誕生日おめでとうございます。
今回はピアスネタ。
お揃いのピアスに憧れます(笑)
タイトルの三椏は花の名前。花言葉は永遠の愛です。





Back