意地っ張りな君は。 やせがまん 名は大きく息を吸った。 ふぅ、とゆっくり吐き出し眼前の扉を叩く。 室内から声がして、扉を開ける。 中に入れば自隊の隊長が眉間に皺を寄せ書類を睨んでいる。 「書類を持って参りました。」 「そうか。」 いつもと変わらぬ返答。 定位置に書類を置く。 身を翻し部屋を出ようと背を向けた。 「姓」 不意に名を呼ばれる。 思わず体が跳ねた。 「な、なんでしょうか?」 呼び止められたことは両手で数えられる程しか無い。 自分は何かミスをしたであろうか、と思いつつ声の主の方へ振り返った。 「疲れてはおらぬか?」 発せられた言葉は自分の体を気遣うもので。 拍子抜けしてしまった。 「あ…えと、大丈夫です。」 「最近は残業続きだと恋次から聞いたのだが。」 桔梗色の瞳が名を真っ直ぐ捉える。 「大丈夫ですよ。朽木隊長に比べたら大したこと無いですよ。」 「其方は女子であろう。私と比べてどうする。」 「そう、ですよね。すいません。」 考えてみれば彼と世間話をしたのは初めてだ。 「謝らずともよい。」 「あ…はい、すいません。」 また云ってしまった、と思わず下を向いた。 「謝らずともよい、と云っている。」 恐る恐る顔を上げると彼は柔らかな笑みを浮かべている。 「あっ」 初めて見た。 堅物な彼が笑っているところを。 「どうした。」 「いえ、何でも。」 「そういえば…」 白哉は少し思考を廻らせ、続けた。 「其方は冷え性だそうだな。」 「え、ええ。何故それを隊長がご存知なのですか?」 「恋次が、な。」 恋次め余計な事を、と思う。 「そう、ですか。」 「この季節は大変であろう。」 「大丈夫ですよ。」 名は白哉の後ろの窓へ視線を向けた。 屋根も、木々も雪が積もっている。 この季節は寒くて仕方がないのだが。 いつの間にか白哉は目の前に。 そっと右手を取られた。 「朽木隊長?」 「随分と冷えているではないか。一体何処が大丈夫なのだ?」 「いつものことですし、もう慣れました。」 白哉はほんの少し眉を寄せ、視線を名の手へ落とした。 「疲れているなら正直に云えば良い。」 「大丈夫ですよ。」 「隈が出来ているが?」 「それは…」 名が答えあぐねているとそっと抱き寄せられた。 「く、朽木隊長!?」 「随分と冷えているではないか。」 「えと・・・」 「其方のやせ我慢は見ていられぬ。」 「はい…」 状況が状況でどうしていいか分からずに白哉の腕に収まったまま動けず。 「無理はするな。正直に云えばよい。」 「はい…すいません。」 「謝らずともよい、と云ったではないか。」 何も悪い事などしておらぬのだから、と続けた白哉を見上げる。 彼は柔らかく笑んでいた。 アトガキという名のいいわけ やせ我慢、と云うかなんと云うか。 収集がつかなくなってしまいましたww Back |