私は、その理由を知っている。

Reason


隣に居る恋人は無口で無愛想で。
それでも自分の隣に居てくれるのがなんとなく嬉しくて。
「白哉?」
「何だ。」
「愛してる。」
彼は表情を変えず相槌を打つ。
「私、白哉に愛されてる?」
「無論だ。」
白哉は何故そのような事を訊くのだ、と云わんばかりの目を名に向ける。
「言葉にしなきゃ伝わらないよ。」
白哉は口数が少ない。
一言も二言も足りない所為で誤解を生んでしまうこともしばしば。
「愛は容易く語るものではない。」
「そういう問題じゃ無いんだけどなぁ。」
最近は大分、口数も増えてきた方だと思う。
ただ、不器用な所は相変わらず。
「どういう問題なのだ?」
「知らなぁい。」
白哉はきっと分かっている筈だ。
証拠に口角が少し上がっている。
名は白哉の膝を枕に寝転がった。
「どうした?」
「眠いの。」
桔梗色の瞳は何時見ても綺麗だ。
切れ長の目には意志の強さが表れている。
名はおやすみ、と言い残し静かに目を閉じた。
「名、愛している。」
夢の淵でそう聞こえた気がする。
やはり白哉は不器用だと思った。
人間関係、特に恋愛に関しては。
そんなことは端から分かっている、と自嘲した。
いつの間にか、思考は夢へと浚われていく。
目覚めた名の目に映ったものは先程と変わらぬ桔梗色の瞳で。

君が愛を語らない理由。 それは恥ずかしいからで。



アトガキという名のいいわけ

白哉さんって器用貧乏だと思うんですよね。
そんな思考から。





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