片思い中の忍足は、私の友達が好きらしい。
忍足を見ている私にしかきっとわからない、あの子への視線。
それが私に向いたら良いのに、私なら忍足の気持ちに応えてあげれるよ、って何度も思った。



「俺、そろそろ告白しようと思うんやけど」



いろいろ話を聞いていて、したくないアドバイスなんかもした。
一番聞きたくなかった言葉をこうして聞くことになるなんてぜんぜん思わなくて、だけど心のどこかで"あぁついにきたか"なんて思っている。
私は私の気持ちが悟られないように、ふうんと小さく答える。



「ふうんってなんやねん。なぁ、楼兎はどう思う?」

『どうって?』

「告白や!成功、すると思う?」

『・・・どうだろ』



嘘でも、大丈夫うまくいくよ、なんて言えない私。
ほんとは笑顔で頑張れって言うのが、話を聞いていた私に出来ることなんだろうね。
それでも、自分の好きな人が他の人に告白するのを笑顔で見送ることなんて、私には無理だ。
好きな人が幸せになるのならそれでいい、そんな風に言える大人になりたかった。



「楼兎の応援があれば、俺頑張れる気ぃすんねん」



そう言って笑う忍足の顔は、私が好きな笑顔だった。
ほんとは、ほんとは応援なんて出来ない。
けれど、忍足の笑顔が見れなくなるより友達として傍にいて、その笑顔を見ていたいから・・・



『・・・はいはいっ!忍足ならだいじょーぶ!一発ドカンと、男見せてこい!』



忍足の背中をトンと叩いてニッと笑顔を見せる。
その瞬間、笑顔だった忍足の顔が、急にまじめな顔になる。



「楼兎、」



名前を呼ばれたと思った瞬間に、両肩を忍足に包まれ、強い瞳が飛び込んでくる。
何が起こったのか理解できない内の出来事に、外すことができない視線に戸惑う。
両肩を包むその力が一層強くなって、ようやく忍足が口を開いた。



「好きや」

『・・・・・・・・・・え、?』



たっぷり間をおいて、掠れて出た言葉。
何を言われたのか頭がついていかなくて、ただ唇だけが音を発しようと震える。
その間も、私を見る忍足の瞳は揺るがなくて、心臓だけがリアルに鼓動している。



「楼兎が好きやで」



耳に聞こえるその声は、目に映るその瞳は、偽りではないこの出来事は、私の思考とストップさせるには十分だった。
だんだんと理解する頭よりも先に、私の口から出た4文字。
それを聞いた忍足が取った行動は・・・・・・・恥ずかしいので内緒にしておこう。








20091018
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"Happy Birthday 09'1015"