3周年フリーリクエスト
To.奏乃 蜜満さま





近所の神社にふらり。
夜の海に浮かんだような三日月と、ほわりと零れる白い息。
タイトルの思い出せない歌を口ずさみながら、ゆったりとこの時間を満喫する。



『あれ、日吉?』



見えた境内に見知った後姿。
思わず声をかければ、それに反応して首だけをくるりと回した。



「・・・一瀬か」

『うん』

「何してるんだ、こんな時間に」

『そっちこそ。私は参拝』

「同じようなものだ」



そう、と短く返事をして日吉の隣に並ぶ。
ポケットからじゃらりと小銭を取り出し、数枚を賽銭箱へ。
両手を叩いて、それから目を瞑って願う。



「一瀬、何を願った」

『秘密。日吉は?』

「言うか」

『じゃあ人に聞かないでよー』



日吉が小さく笑う。
普段笑わない人が笑うと、なんだかラッキーな気がする。
小さな幸せを感じて空を仰げば、浮かぶ三日月の光が優しくて、寒いはずなのに暖かく感じた。
隣を見れば、日吉の横顔が飛び込んできて、同じように空を仰いでいる。



「寒いはずなのに、なんだか暖かく感じるな」



そうして、私が思っていたことと同じことを口にした。
だけど、そんなことは心の中にしまって、一度だけ頷いた。



「そういえば。この神社、恋愛成就だって知ってたか?」

『うん』

「そうか」



また、うん、と返事をして零れ落ちる白い息。



『日吉は知ってた?』

「あぁ」

『ふうん』



零れた白い息が夜の海に溶けていく。
冷たくなったほっぺたがじんじんと痛む。
浮かぶ月がゆらゆらと揺れ、私と日吉を黄色く染める。



「寒いか?」

『ううん、あったかい』

「そうか」

『うん』



手を繋いでるわけでも、抱き寄せ合ってるわけでもない。
私と日吉の間に僅かな距離はあるけれど、それでも寒くなんてなかった。



『帰らないの?』

「一瀬こそ」

『日吉が帰るなら、帰るよ』



静かな闇に響く声。
瞬く星は決して多いとはいえないけれど。



「帰らないのか」

『日吉こそ』

「一瀬が帰るなら、帰るさ」



なんて、微妙な返答。
お互いにその後は言葉を紡がず、また空を仰げば、暖かな月の光が私と日吉を包むのだった。






(神様への願いは君への願い)










20090103
祝3周年フリーリクエスト
奏乃 蜜満さま/同級生で甘
(知らずに想い合ってる2人、がコンセプト)

 
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