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To.直子さま






その日は、とにかく失敗続きだった。
何をやってもうまくいかない日って、あると思うんだけど、ここまで失敗ばかりだと頭を抱えるどころは落ち込みすぎてしまう。
国光くんも菊丸くんも気にしないでって言ってくれたけれど、その言葉に逆にテンションは下がるばかり。
リョーマくんの冗談なのかそうじゃないのか、言われた言葉にもグサリ。
一日中落ち込みっぱなしの私に、友達も呆れ半分であんまり構ってくれなかった。
だから合間合間に侑ちゃんからの言葉が欲しいなぁなんて思ってメールをしても、部活終了後の今でさえ返信はない。



『侑ちゃんまで・・・。なんでこんなに失敗ばっかなんだろう』



きっと侑ちゃんも部活で忙しいんだと思う。
こういうとき思うのは、どうして私と侑ちゃんは同じ学校じゃないんだろうってこと。
そんなこと言っても仕方ないのにね。
それに、もし私と侑ちゃんが同じ学校だったらこうして出会ってなかったかもしれない。
だけど、それでも、返信が欲しい時にくれないのは辛すぎる。
特に今日は。



「明日はいい事あるよ」

『不二、くん』



マネージャーを含めてみんなで帰るのが暗黙の了解みたいになっているうちの部。
私と不二くんは先に準備を終えてしまったので、部室の外でほかのみんなを待つ。
未だ落ち込み気味の私に、不二くんが優しく微笑みながら慰めの言葉をくれるけれど、それすら素直に受け取れない。
携帯を確認しても侑ちゃんからの着信も返信もないし、私のことなんかわすれちゃってるんじゃないかな。
想像しただけでじわっと涙が浮かぶから、ほんとに今日の私はダメらしい。



「あ、明日じゃなくて今日かもね」

『え?』

「見てごらん」



不二くんの優しい声に促されるように顔を上げる。
示された方に視線を移せば、呼吸が乱れているのか、肩で息する侑ちゃんの姿。



「行っておいで。みんなには僕から伝えといてあげるから」

『でも、』

「マネージャーの覇気がないと、僕らも力が出せないんだよ」

『不二くん・・・うん』

「明日はスペシャルドリンク、期待してるね」

『ありがとう!みんなによろしくね、お疲れ様!』



ばいばい、と手を振ってくれる不二くんに手を振り返しながら、侑ちゃんの待つ場所へ走る。
私に気づいた侑ちゃんが百音、と名前を呼んでくれるから、さっき引っ込んだ涙がまたじわりと浮かんできてしまった。



「百音!」

『侑ちゃん、なんで、返事、くれなかったの?』

「・・・堪忍。なかなかタイミング合わんくて、あっという間に部活始まってまうし、なんとか跡部に頼んで早く上がらしてもろたん」

『部活終わってもなんにもなくて、私・・・』



じわじわこみ上げた涙がついにぽろりと頬を伝う。
そんな私の涙を侑ちゃんが指で救い上げてくれるけれど、後から後から続くのでキリがない。
救い上げていた指を頬から離すと、今度は侑ちゃんの唇が頬を掠める。



「連絡するなんて頭になかったん。早く百音に会わんと、って気持ちでいっぱいで・・・ほんまに堪忍してな」

『ん、ん。来てくれたから、いいの』

「あーあ、目ぇ真っ赤やん。うさぎさんになってまうで?」

『ならないもん』

「百音がうさぎさんになったら俺が家で飼ったるからな」



なんて笑いながら言う侑ちゃんに、思わず私も笑った。
それから2人で公園のベンチに移動して、侑ちゃんが買ってくれた缶のミルクティーを左手に、反対の右手は繋いだまま、今日遭った出来事を一つ一つ話した。
うんうん、と聞いてくれる侑ちゃんに全部ぶちまけたら、なんだかちょっとスッキリして気持ちも落ち着かせることが出来た。



『明日からは失敗しない毎日がいいなぁ』

「そうなん?」

『だって、失敗が続いて気分が落ちるのってほんとに嫌なんだもん。今日ですっごい実感した!』

「んー俺はたまにやったらええと思うで?」

『えーなんで?』



話すことに夢中でなかなか減らなかったミルクティーの缶を傾けて、一口二口と喉に流し込む。
少し温くなってしまったけれど、程よい甘みが体に沁み渡る。



「やって、こうして百音が泣きそうに縋って来るんもかわええなぁって思うし」

『なっ!』

「それに、俺は成功して喜んだり、失敗して落ち込んだりする、ありのままの百音が好きやで」



夜風が私と侑ちゃんを包み込んで、体がベンチから少し浮いた気がした。
だからそのまま、その風に乗ってふわり、私は侑ちゃんにもたれかかる。
揺れる葉音だけが公園内に響いて、まるで異世界みたい。
この場所に、私と侑ちゃん2人だけのような気がして、どちらともなく距離が縮み、そうしてそっと唇が触れた。
相変わらず繋いだままの右手は、2人の体温に僅かながらじっとりとしてきた。
けれど、触れた唇と繋がれた手と一緒に、体ごと融けそうな気がしてそうなったらいいなと、お互い一層に身を寄せた。








(それでも、落ち込んだ君よりも笑顔な君が1番好きやで)






20100519
キリバン999999HIT代リクエスト
直子さま/ヘマして落ち込んでる主人公
(少し指定のセリフを変えさせていただきました。一応"てのひらからしあわせ"の主人公のつもりで書きました)

 
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