「百音ちゃんお待たせー!」
待ち合わせの場所に、手を振りながら走って向ってくるジロー。
そんなジローに返すように、私も手を振った。
嬉しそうにその顔に笑顔を浮かべるジローを見ると、私の心がほっと安心する。
『おつかれさま』
「疲れたCー!」
『ジロー汗だくじゃん』
「だって急いだもん」
早く百音ちゃんに会いたくて、と言うジローが可愛くて思わずふふっと笑う。
ポケットから取り出したハンカチで汗だくのジローの額を拭えば、ありがとーとまた笑顔。
『私もジローに早く会いたかったよ』
「〜〜〜〜〜っ!百音ちゃん好きー!」
『はいはい』
飛びついてきたジローを宥めながら、そろそろ行こうかと歩き出す。
夕焼けに染まる道沿いを、2人並んで歩く。
しっかりと繋がれた手からは、ジローのほのかな温もりが伝わって、自然と心が満たされる。
「百音ちゃん、いつも待ってて退屈じゃない?」
『へーき』
「ほんとに?」
『ほんと』
「ほんとにほんと?」
『ほんとにほんと!』
ジローを待ってる時間は決して短くはないけれど、今頃頑張ってるのかなぁとか寝てないかなぁとか、考えるだけで時間なんてあっという間。
退屈どころかジローのこと考えてて忙しいんだよ、なんて冗談交じりに口にすれば、繋がれていた手に力が込められる。
「百音ちゃん、それ反則だC」
『えぇ?』
「そんなカワEこと言うの、ずるいっ!」
『可愛いって、』
「あーもー百音ちゃんカワEー!」
繋いだ手をブンブン振って、それから引き寄せられて、重なる唇。
ジローのほわほわの蜂蜜色が目に飛び込んで、それからスッと遠くなる。
「チューしちゃったぁ」
少し照れたように笑うジローに、胸がキュンとなる。
相変わらず強く握られた手は離さないよと言っているようで、私もそれに返すように手に力を込めた。
20090605
繋いだ手の心地良さ