『忍足せーんせっ』

「まーた来たんか、一瀬」



えへへ、と笑って忍足先生の傍へ。
持ってきたお弁当を目の高さに持ち上げて忍足先生にアピール。
渋々と空いている椅子を引いて座るように促してくれた先生にお礼を言って座る。



『今日はねー忍足先生の分もお弁当作ってきちゃった』

「なんでそんなめんどいことしてんねん」

『だってさ、先生ってばいっつも菓子パンか惣菜パンなんだもん。栄養偏るよー?』

「そない柔な体やないで」



はにかんで笑う先生にはいっ、とお弁当を手渡す。
ちょっと躊躇しながらも受け取ってくれる先生に安堵して、開けてみて、食べてみて、と急がす。



『私ね、家庭科の成績だけはいいんだよ』

「そんかわり数学は苦手やけどな」

『うーだって計算式とか数字とか意味わかんないんだもん』

「何言うてんねん。数学はそこに魅力があるんやで?」




キラキラと瞳を輝かせて数学について語る忍足先生。
その隅っこにちょこんと私が映りますようにって、心の中でひっそりと思う。



『忍足先生ってば数学の魅力には気づくのに、私の魅力にはちーっとも気づいてくれないけどねー』

「何言うてんねん一瀬」

『ほら、そーやっていつも誤魔化す』

「誤魔化してなんかないて」

『嘘だね。先生ってば私の気持ちに気づいてる癖に、子ども扱いして知らん顔するんだよ』

「一瀬・・・・」



困ったような忍足先生。
でも、話し出した私の口は閉じることを知らない。



『私、忍足先生のことが好き』

「・・・一瀬、」

『教師だからとか、生徒だからとか、そんなの関係ないよ。先生だから、忍足先生だから好きになったんだよ』

「俺は、」

『だから先生も考えて』



先生の言葉を遮って、言葉をかぶせる。
きっと、すぐに否定的な答えを出してしまうだろうし、そんなの私が嫌。
私をちゃんと知ろうとしないで、それで返事をされたって納得がいかない。



『私のこと、もっと考えて』

「一瀬」

『忍足先生の生徒である一瀬百音ではなく、一人の女としてちゃんと悩んで』

「・・・わかった」

『私、先生を振り向かせる自信あるよ』



そう言って開けたばっかのお弁当をさっと片付ける。
宣戦布告の言葉を投げかけて、先生が口を開く前に立ち去る。
さぁ、これからが大変。
毎日お弁当を持ってって、私って言う人物をアピールしなくっちゃ。



『覚悟しててね、忍足せんせっ!』









20091020
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