「・・・なん?」

『あげるっ!』



キレイにラッピングした包みを、乱暴に忍足に渡す。
突然のことに驚く忍足をにそっぽを向け、包みの受け取りを待つ。
料理本を見て悪戦苦闘しながら初めて着くったクッキー。
焼き加減とかがすごく難しくて、これでいいのかな、あってるのかな、と不安になりながらも作りあげた。



「百音、なんやこれ」

『あげるって言ってるんだからもらえばいいの!』

「そないなこと言われたって」

『受け取ってよ!』



ほらっ、と忍足の胸に包みを押し付け無理やり受け取らせる。



「開けてええの?」

『・・・うん』

「んー、おっ、クッキーやん」




食うてええの?と聞く忍足に黙って頷く。
クッキーをひとつ手に取った忍足がゆっくりと口に運ぶのを、横目でチラリと見て、どんな反応をするのかドキドキしながら待つ。
咀嚼する口の動きに視線を這わせて、ごくりと唾を飲み込んだ。



「苦っ」

『え、』



だけど、忍足の口から出たのはまさかの言葉で、私は驚きに目を見開く。
あんなに頑張ったのに、と気分が落ちてくる。



「でも、百音からの愛は伝わったで」



バチンとウインクする忍足に、一気に顔に熱が集まる。
だって、愛って、そんなの・・・!



『うるさい、ばかっ!』



叫んで逃げるように体を回転させて走る。
後ろで忍足がなんか言ってたような気がするけれど・・・



「あんな態度、好きっちゅーてるようなもんやのに」



私の耳には届かなかった。







20091015
ほろ苦クッキーは恋の味
"Happy Birthday 09'1015"

 
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