「・・・・百音は犯罪者になりたいのか」



目の前で腕を組んで私の見下す景吾。
しっかりと足を組んで正座する私は、そんな景吾を見上げている。



『だって、』

「だってじゃねぇだろ」

『まさか鳴るとは思わなかったんだもん』



頑張って景吾の家のでっかい門をよじ登って、景吾の部屋目指して壁をよじ登ろうとしたところで、警報音が響いた。
それに驚いて足を滑らし、1、5メートル弱の所から地面に落下。
痛みに悶絶している所を懐中電灯と番犬を従えた景吾に発見され、そうして今に至る。



『セコムとか反則でしょ』

「泥棒かと思ったじゃねぇか」

『だってぇ』

「事が大きくなってからじゃ遅えんだよ」

『大きくなるなんて思わなかったもん。そんなつもりじゃなかったもん』

「じゃあどんなつもりだ」



冷たい景吾の声にビクリと体を揺すって、そろりとまた景吾を見上げた。
眉を吊り上げて、あーん?なんて言う景吾の迫力に、私の瞳に涙がこみ上げる。
そんな私に少し焦ったのか、景吾はしゃがんで私と同じ高さに目線を合わせ、ゆっくりで良いから言ってみろと頭を撫でた。
それに安心してボロボロと零れる涙もお構いなしに口を開く。



『け、ごのこと、おど、かしたかっ・・・もん』

「?」

『0時に、とつぜん、出て、おめでと、って、言いたかった、の』



しまいには、うわーん、なんて子供みたいに大声で泣き出す私。
景吾が抱きしめてくれて、背中をポンポン叩いてあやしてくれるけど、一向に涙も泣き声も止まらない。



「わかった、わかった。俺の為だったんだろ?」

『ひくっ、う、ん』

「百音の行動力にはいつも驚かされるが、まさかここまでとはな」



クックック、と笑いながら私の涙を指先で掬った景吾。
そんな景吾にだんだんと落ち着きを取り戻した私の涙は止まり、ポケットから携帯を覗かせて画面を確認。
計画通りには行かなくて、0時も既に2分過ぎ。
だけど、それでも、景吾の腕の中で言えるのならと、がばりと顔を上げた。



『けーご、おたんじょーびおめでとうっ!』



鼻声で、しかも泣いて顔はぐちゃぐちゃだけど、景吾に言いたかったその言葉。
ありきたりで、もう14回同じことを言われているだろうけれど、15回目の一番は私が言いたかったその言葉。
景吾が産まれて15年目の記念すべきその日に、私はめいっぱいの笑顔を浮かべて、百音と私の名前を紡ぐその唇に、たっぷりの愛と気持ちを詰め込んで口付けた。








(視界に飛び込んだ景吾の顔は、とろっとろに融けたチョコレートのようだった)







20091004
景ちゃんハピバ!

 
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