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To.美月さま






少し伸びた髪は不器用ながらも自分で巻けるようになった。
毎月こっそり本屋で買うファッション雑誌を参考に、景吾好みの洋服を揃えて、ほどほどになら着こなせるようにもなった。
だけど、それがすべて景吾のためだなんて思うのが恥ずかしくて、相変わらず景吾には素直になれないで居る。



『は、今から?』



突然震えた携帯の表示画面を見れば、見慣れた名前。
なんだろうと通話ボタンを押せば、遅ぇ、と一言言われた後に出かけるぞ、とまた一言。
突然のことに驚けば、景吾は当然だろと言わんばかりに話し続ける。



「"あぁ、急だがもう予約した"」

『ちょ、予約って中学生がすることじゃなくない?』

「"俺をそこらの中学生に分類するんじゃねぇ"」

『確かに・・・じゃなくて、急すぎてあたし今パジャマなんだけど』

「"着替えろ。10分後に百音の家の前な"」

『10!?無理!ちょ、け、景吾!?・・・・・・切りやがった!!』



ツーツーと無情にも流れる携帯を見つめて、そしてハッと我に返る。
10分と言うからには、きっちりと遅れることなくやってくるだろう景吾を想像し、バタバタと準備を始めた。



「2分遅刻だ」

『に、2分くらい多めに見てよ。むしろ12分で準備が終わったあたしを褒めて欲しいくらいだし』

「クックックッ」

『笑い事じゃないよ、もう』

「短い時間の割には、大分俺好みに仕上がったじゃねぇか」

『っうるさい!』



赤くなる顔を隠すように捲くし立てて、景吾の車に乗り込む。
後ろで笑っている景吾を無視するように座席に座れば、運転手さんがゆっくりと車をスタートさせた。



『何処行くの?』

「どっか」

『何それ』

「お楽しみってやつだ」



何を言っても目的地を教えてくれない景吾に諦めて窓から外を眺める。
いつの間にか車は街中に移動していて、夜の街に浮かぶビルのネオンや街灯が眩しい。
そうして、目的の場所に着いたらしく車のドアが開かれ、景吾がそっと手を伸ばしあたしをエスコートしながら車から降ろす。



『目的地って、ここ?』

「あぁ、百音腹減ってるか?」

『夜ご飯まだだもん』

「ならいい」



離すことなく繋がれたままの手を引かれながら、高そうなお店に入っていく景吾。
え、まさかここで食事!?なんて思ったとおり、受付のお兄さんに跡部だ、なんて言って中に入って行く。
すれ違う店員さん全員が戸惑うあたしと物ともしない景吾に頭を下げる。



『け、景吾!』

「あーん?」



ドギマギするあたしに振り返ることなく返事だけして歩く景吾。



「ここだ」

『えっ?』



景吾が足を止めて、でもあたしには景吾の背中しか見えない。
いったい何?と首を傾けた時、景吾が手を引いてあたしを前に促した。



『うっわぁー!』



その瞬間、飛び込んでくるのは漆黒に浮かぶ色とりどりの光。



「すげぇだろ」

『すごい、すごいよ!』

「ふん」



興奮するあたしを見つめる景吾の視線にも気づかずに、あたしは目の前に広がる夜景に釘付け。
キラキラと光り輝くビルや街灯の明かりが夜空と交じって、今まで見たことのない様な光景に開いた口が塞がらない。
180度広がるその光景は、あたしの言葉を失うに相応しくて思わず隣に立つ景吾のシャツを握った。



「百音に見せたくてな」

『キレイ・・・』

「俺も初めて見たときは奮えたぜ」

『なんだか、宇宙みたい』

「宇宙、か。・・・そうだな」



2人で並んで見る夜景。
きっと、写真に撮っても今この時の感動は蘇らない。
実際にこうやって景吾と2人で見るからこそ、こんなにも心が奮えるんだと思う。



『ずっと、見てたいね』

「また見に来ればいいだろ」

『連れてきてくれるの?』

「あぁ。百音が望むなら、いつだって連れてきてやるよ」



キュっと肩を抱き寄せられて、2人の距離が近づく。
景吾がそっとあたしの顎を掬って、ゆっくりと瞳を閉じれば、ふわりと温もりが唇を掠める。
一度瞳を開いて、景吾が優しく笑うから、あたしもつられて笑って、また瞳を閉じる。
ふわりと触れて、離れて、また触れて。
だんだんと深くなる口付けは、甘く、じんわりとあたしの心に沁みていった。



「飯にするか」

『・・・ムード台無し』

「なら、」

『?』

「百音を頂くとしようか」






Magic of night
(12時になっても解けない、景吾からの魔法)






20090929
キリバン970000HITリクエスト
美月さま/甘々夜景デート
(自己中<俺様<男前<エロ親父、な感じになっちゃった*笑 美月さまへ以前捧げたリク"Magic of love"の続きです^^)

 
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