(若様×男の子)









『若にーちゃんいっしょにねてもいーい?』



さて今から明日の予習でもしようかと机に向かい始めた頃、自室の扉がゆっくりと開き、弟である万里が顔を覗かせた。
愛用のクマのぬいぐるみを小脇に抱えながら、少しおどおどしながら口を開いた万里。
俺を伺うように見る万里の様子がなんだか可笑しいことに気づき、どうしたと訪ねればその目にうっすらと涙を浮かべた。



『あの、ね』

「ん」

『こわいゆめ、みたの』



なんだそんなことか、とは口に出さない。
万里のことだから大泣きするに違いない。
そう思った俺は、ふうとため息をひとつ吐いて、広げようとしていた教科書を元に戻した。
そのまま自分のベッドへ腰掛け、入り口でジッと待っている万里を呼んでやる。
もじもじしながら一歩、また一歩と近づき、目の前まで来た所で万里の両脇に手を差し込み持ち上げ、ベッドへと乗せてやる。



「俺と一緒に寝たら怖くないのか?」

『ん。だって、若にーちゃんのそば、あんしんするもん。こわいゆめだって、きっとみないよ』

「・・・そうか」

『うん!』



笑って頷く万里の頭をひと撫でしてやり、落ちないように壁側の布団を捲って万里の体を布団で包む。
その隣に俺も潜り込み、クマのぬいぐるみを抱きしめる万里を、クマごと抱きしめてやる。
俺も胸に擦り寄ってくる万里を安心させるように、背中を一定のリズムで叩く。



『若にーちゃん、おやすみなさい』

「あぁ、おやすみ」



腕の中の万里はウトウトしだし、しまいには聞こえてくる寝息。
それに(いざな)われるように、俺の意識もだんだんとまどろむ。
隣の温もりを味わうように、俺は無意識のうちに万里を抱きしめるのだった。
(万里が居ないことに気づいた母さんが、寄り添って眠る俺と万里を携帯カメラに収め、待受に設定する朝まで後数時間)