(若様×男の子)









『若にーちゃん、あーん!』



食事中、隣に座る弟の万里はまたも俺の洋服をグイグイと引っ張り、フォークに刺さった人参を俺に向けてきた。
意味が分からず何も反応を示さないで居ると、痺れを切らした万里が頬を膨らませる。



『あーん、だよ!若にーちゃんおくち、あーん!』



短い手を目一杯伸ばして俺に食べさせようとする。
そんな万里をジッと見つめてすぐに顔を上げれば、母さんが楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべて俺と万里を見ていた。
そうか、今回も母さんの仕業か。



「母さん、いい加減にしないと怒るぞ」

「あら、いいじゃない」

『若にーちゃん、あーんっ!』



いい加減ウンザリするも、一応は可愛い弟。
俺が中々口を開けないのが悲しいのか何なのか、段々と万里の目に涙が浮かんでくる。
やれやれ、と内心思いつつも俺は口を開けた。
そうすれば一転、悲しそうな顔は見る見るうちに笑顔に変わった。



『えへへ、あーん!』



俺も当分、弟離れできないのかもしれない。