眉間に皺が寄っててー、鉄仮面でー、だけど優しい弟くん!







〜手塚 国光の場合〜





『菊ちゃん大変!!』

「にゃ!?真白どうしたにゃ?」

『くーちゃんが――

「・・・手塚?」

「真白!!!!」

――追いかけてくるのぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

「にゃー!!!」



どうも、今日和!!
俺の名前は手塚ナナシ!



「ナナシ止まれ!!」

『お兄ちゃんを労わりなーさい!!』

「労われるか!!」



正真正銘、手塚国光の双子のお兄様でっす!



『菊ちゃん助けて!!』

「無理にゃ!!」

『わぁーん、白状ものぉー!!』

「真白ー!!」



あ、そうそう。
なんでくーちゃんに追いかけられてるかと言うと・・・



「俺の眼鏡のレンズを拭けー!!」

『油性だから無理ぃ〜』



くーちゃんの眼鏡を真っ黒に塗りつぶしたからですっ!
油性ペン2本使っちゃったよ!
ってか、よくその眼鏡かけて走れるよねー。
タモさんみたいな顔だぞー?



「ナナシ、止まらないとプリンは無しだぞ」



ピタッ



『くーちゃんズルイ!!』

「作戦勝ちだ」

『だってプリン食べたいもん』



くーちゃんの手作りプリン。
最高に美味しいんだから♪






キュッ    

         キュッ


   キュキュッ






「一箇所残らず、綺麗にするんだ」

『ふえーん』



現在生徒会室。
くーちゃんは眼鏡を外した顔を、人に見せたがらないから。
そして俺の右手には白いタオル、左手には黒く塗りつぶされた眼鏡。



「自業自得だろう」

『だって珍しく、くーちゃん教室で寝てたんだもん。はい、眼鏡』



拭き終わって元に戻った眼鏡を差し出しながら、
口を尖らして言えば、くーちゃんは顔を真っ赤にした。
あれれ?



『真っ赤だ』

「寝顔・・・見た、のか?」

『可愛かった!』



ブイサインしながら答えると、くーちゃんに殴られた!!
痛いー!!!



『お兄ちゃんになんてことするのー!!』



うぁー、くーちゃんってば俺のことシカト?
いくらなんでもヒドイよ、俺ってば拗ねちゃうんだから!!



「ナナシ」

『なーにー』



ぶすーっとしたまま、顔も見ずに答える。
お兄ちゃん悲しいんだから!!



「さぁ、帰るぞ」



その声にバッ、と顔をあげれば・・・



「ナナシ?」



くーちゃんの優しい笑顔。
それがすごく嬉しくて、俺はさっきまでのことなんて忘れた。



『はーいっ!』



席を立ったくーちゃんを追うように、俺も席を立つ。
カバンを持って、くーちゃんの右腕にしがみつく。



「歩きにくいだろ?」

『お兄ちゃんを労わりなさい!!』



二度目のセリフだけど、今回返ってきたのは微笑みだった。
だから俺も、くーちゃんにとびっきりの笑顔を見せた。



『帰ったらプリンね!』

「ナナシが手伝うんだったらな」




くーちゃんと俺は、今日も仲良しです!!





END_国光の場合
執筆20060419
再録20100315

NO加筆修正っていうね(ダメじゃんよ)