『すみません』
「ん?」
『こちらに忍足侑士と言う名の伊達眼鏡いらっしゃいますか?』
ニッコリした笑顔で俺の前に現れたのは、とてもキレイな男の子でした。
![](//static.nanos.jp/upload/4/4usa/mtr/0/0/20100306014656.gif) 〜忍足 侑士の場合〜
俺、向日岳人は忍足侑士のダブルスパートナー。 コートで一足先に準備運動してたら、知らない奴の話しかけられた。 纏う制服がここらでは見たことのないものだったので、県外の生徒だろうかと首を傾げる。
「侑士なら今居ないぜ?」
『チェッ、あの伊達眼鏡め』
目の前に居るこの男は一体誰なんだ? テニスコートに突然現れたかと思ったら、"忍足侑士と言う名の伊達眼鏡いらっしゃいますか?"だなんて。 侑士とどんな関係で、どんな用事なんだろう?
「岳人今日は早いやん」
「侑士、なんかお前に、」
『侑士ー!何処で油売っとんねん!』
「は?って、ナナシ?ななな何してん!?」
『何してん、じゃないわ阿呆!』
「何でコッチに居るん!」
『侑士に会いに来たに決まっとるやないか!』
目の前で始まった言い争い?から察すると、どうやら2人は列記とした知り合いらしい。 しかも砕けて話すところから、かなりの仲とみる。 侑士も相手も関西弁だし、向こうの友達かなんかか?
「会いに来たって、そりゃ嬉しいけど普通は連絡も無しに行き成り来んやろ!」
『思い立ったがなんちゃら、って言うやろ!』
「あのー」
「それとこれとは話が別や!」
『別ちゃうわ!』
「あのー」
「このことオカンは知っとるんやろな?」
『んなもんちゃんと書置きして来たに決まってるわボケ!』
「・・・なんて書置きして来たん?」
『え?"(侑士に会いに)行って来るわ。(そのうち帰るので)探さんといてや〜"やけど?』
「そんなん書置きちゃうわアホー!!!!」
うん、確かに書置きなんて言わねぇな。 ってかさっきから俺のこと無視してるし、こういう場合って俺どうしたらいいんだ? 部活もそろそろ始まるし、跡部とか来ちゃったら更にややこしくなんじゃね?
『なんでや!しっかりとした書置きやないか!』
「カッコが多すぎやっちゅーねん!」
『理解できるやろ普通!!』
「できひんわ!!」
ダメだ、俺にはどうすることもできない。 むしろ入れねぇ。
「オカン心配してるやろ!」
『してへんわ!これが普通や、これが!!』
「・・・・頭痛いわ」
『え、侑士体調悪いん?』
「ナナシのせいや!」
だからナナシって誰!? 侑士と仲のいい奴ってのは分かったけどさ、コート内が騒がしくなる前にどうにかして欲しい。 俺跡部とかに侑士のフォローとかできねぇからな!
「あのー?」
「ん?なんや岳人?」
「いや、コイツ誰?」
『コイツ言うなや!』
「だって名前知らねぇし」
『あれ?言うてへんかったっけ?』
俺のこと無視して侑士と話してたからじゃねーか!とは言わないでおく。 だってなんかもっとややこしくなりそうだから。
『俺の名前は忍足ナナシ、よろしくな』
「忍足ナナシかー。俺は向日岳人で侑士のダブルスパ・・・って忍足?」
『おぉー岳りんナイスツッコミ!』
「ナナシ、岳りんって何なん?」
『阿呆か?岳りんに決まってるやろ』
そう言って俺を指差しながら侑士に言う、ナナシ。 侑士と同じ苗字だけど、親戚かなんかなのかな? にしたって岳りんってあだ名としてどうなわけ? これでも一応中3だぜ?
「お前等って親戚かなんか?」
「・・・」
『・・・』
「え、シカト?」
「『双子や双子』」
「はぁ!?」
双子って、双子だろ? え、親戚とかじゃなくって、双子? つまりは血を分けた兄弟で、しかも双子? あーなんか頭痛くなってきた。
『んー岳りんツッコミ決定やな』
「いやいやツッコミっておかしいだろ」
『おぉ、早速ノリツッコミ!』
「ちげぇし!・・・・って、双子ってなんだよ。どういうことか言ってミソ!」
これが関西のノリなのか? よかった、侑士がここまで酷いノリじゃなくて。 (いや、いつもちょっと、ほんとにちょっとウザイときとかあるけどさ)
『岳りんはミソっ子なんやねー』
「ミソっ子ってなんだよ!」
『うんうん。やっぱユッコミ向いとるわ!』
そう言ってナナシは、ほなまたー、と去って行った。 ん? 今さっき来たばっかで、去ってったってなんだ?
「なぁ侑士・・・」
「わかっとる。わかっとるから言わんでええよ」
横の侑士に、どういうことか訪ねようとを首を傾けて訪ねる。 が、すべてを悟ってるような顔で侑士は、遠くを見ながら泣いていた。 それにしても悠月って、何しに来たんだ? (よし、今度来るときは大阪土産をお願いしよう。なんて思いつつ、侑士の肩を叩いてやった)
END_侑士の場合 執筆20051119 再録20100306
侑ちゃんにはこんな片割れ君が似合うはず!!
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