『すみません』

「ん?」

『こちらに忍足侑士と言う名の伊達眼鏡いらっしゃいますか?』



ニッコリした笑顔で俺の前に現れたのは、とてもキレイな男の子でした。







〜忍足 侑士の場合〜





俺、向日岳人は忍足侑士のダブルスパートナー。
コートで一足先に準備運動してたら、知らない奴の話しかけられた。
纏う制服がここらでは見たことのないものだったので、県外の生徒だろうかと首を傾げる。



「侑士なら今居ないぜ?」

『チェッ、あの伊達眼鏡め』



目の前に居るこの男は一体誰なんだ?
テニスコートに突然現れたかと思ったら、"忍足侑士と言う名の伊達眼鏡いらっしゃいますか?"だなんて。
侑士とどんな関係で、どんな用事なんだろう?



「岳人今日は早いやん」

「侑士、なんかお前に、」

『侑士ー!何処で油売っとんねん!』

「は?って、ナナシ?ななな何してん!?」

『何してん、じゃないわ阿呆!』

「何でコッチに居るん!」

『侑士に会いに来たに決まっとるやないか!』



目の前で始まった言い争い?から察すると、どうやら2人は列記とした知り合いらしい。
しかも砕けて話すところから、かなりの仲とみる。
侑士も相手も関西弁だし、向こうの友達かなんかか?



「会いに来たって、そりゃ嬉しいけど普通は連絡も無しに行き成り来んやろ!」

『思い立ったがなんちゃら、って言うやろ!』

「あのー」

「それとこれとは話が別や!」

『別ちゃうわ!』

「あのー」

「このことオカンは知っとるんやろな?」

『んなもんちゃんと書置きして来たに決まってるわボケ!』

「・・・なんて書置きして来たん?」

『え?"(侑士に会いに)行って来るわ。(そのうち帰るので)探さんといてや〜"やけど?』

「そんなん書置きちゃうわアホー!!!!」



うん、確かに書置きなんて言わねぇな。
ってかさっきから俺のこと無視してるし、こういう場合って俺どうしたらいいんだ?
部活もそろそろ始まるし、跡部とか来ちゃったら更にややこしくなんじゃね?



『なんでや!しっかりとした書置きやないか!』

「カッコが多すぎやっちゅーねん!」

『理解できるやろ普通!!』

「できひんわ!!」



ダメだ、俺にはどうすることもできない。
むしろ入れねぇ。



「オカン心配してるやろ!」

『してへんわ!これが普通や、これが!!』

「・・・・頭痛いわ」

『え、侑士体調悪いん?』

「ナナシのせいや!」



だからナナシって誰!?
侑士と仲のいい奴ってのは分かったけどさ、コート内が騒がしくなる前にどうにかして欲しい。
俺跡部とかに侑士のフォローとかできねぇからな!



「あのー?」

「ん?なんや岳人?」

「いや、コイツ誰?」

『コイツ言うなや!』

「だって名前知らねぇし」

『あれ?言うてへんかったっけ?』



俺のこと無視して侑士と話してたからじゃねーか!とは言わないでおく。
だってなんかもっとややこしくなりそうだから。



『俺の名前は忍足ナナシ、よろしくな』

「忍足ナナシかー。俺は向日岳人で侑士のダブルスパ・・・って忍足?」

『おぉー岳りんナイスツッコミ!』

「ナナシ、岳りんって何なん?」

『阿呆か?岳りんに決まってるやろ』



そう言って俺を指差しながら侑士に言う、ナナシ。
侑士と同じ苗字だけど、親戚かなんかなのかな?
にしたって岳りんってあだ名としてどうなわけ?
これでも一応中3だぜ?



「お前等って親戚かなんか?」

「・・・」

『・・・』

「え、シカト?」

「『双子や双子』」

「はぁ!?」



双子って、双子だろ?
え、親戚とかじゃなくって、双子?
つまりは血を分けた兄弟で、しかも双子?
あーなんか頭痛くなってきた。



『んー岳りんツッコミ決定やな』

「いやいやツッコミっておかしいだろ」

『おぉ、早速ノリツッコミ!』

「ちげぇし!・・・・って、双子ってなんだよ。どういうことか言ってミソ!」



これが関西のノリなのか?
よかった、侑士がここまで酷いノリじゃなくて。
(いや、いつもちょっと、ほんとにちょっとウザイときとかあるけどさ)



『岳りんはミソっ子なんやねー』

「ミソっ子ってなんだよ!」

『うんうん。やっぱユッコミ向いとるわ!』



そう言ってナナシは、ほなまたー、と去って行った。
ん?
今さっき来たばっかで、去ってったってなんだ?



「なぁ侑士・・・」

「わかっとる。わかっとるから言わんでええよ」



横の侑士に、どういうことか訪ねようとを首を傾けて訪ねる。
が、すべてを悟ってるような顔で侑士は、遠くを見ながら泣いていた。
それにしても悠月って、何しに来たんだ?
(よし、今度来るときは大阪土産をお願いしよう。なんて思いつつ、侑士の肩を叩いてやった)






END_侑士の場合
執筆20051119
再録20100306

侑ちゃんにはこんな片割れ君が似合うはず!!