和顔愛語とは、なごやかな表情と親愛の情がこもった言葉づかい。 また、親しみやすく暖かい態度のこと。
![](//static.nanos.jp/upload/4/4usa/mtr/0/0/20100306014656.gif) 〜日吉 若の場合〜
ここ、氷帝学園にはちょっとした名物がある。 学年は2年。 少し色素の薄い髪色の少年と、艶やかな黒髪を上品に結っている少女。
『若さん、今日久しぶりに輝夜さんとお茶をするの。宜しかったらご一緒に如何かしら?』
"若さん"と呼ばれ振り向いた少年。 彼こそ名物の1人、御存知テニス部2年の日吉若である。
「ナナシ・・・俺が行ったら迷惑になるだろう?」
『そんなことないわ。輝夜さんが、若さんも是非にと』
"ナナシ"と呼ばれた少女。 彼女もまた名物の1人、氷帝で日吉ナナシと言ったら知らないものはいない。 そう、苗字と学年からわかるように名物の彼と彼女は、双子の姉弟なのである。
「ならば時間があったら寄らせてもらう」
『そうして下さると、輝夜さんも喜びます。もちろん、私もですけれど』
どことなく似ている若とナナシ。 幼い頃から躾けられてきた日吉家。 それ故にか、誰に対しても敬語を使用するナナシ。 それは血をわけた両親、もちろん双子の弟である若に対してもであった。
「場所はいつもの茶室か?」
『えぇ。美味しい御茶菓子が入ったのよ』
「それは楽しみだな」
一見"敬語"と聞けば、どこか堅苦しい印象だがナナシは違う。 なんと言うか、彼女独特の雰囲気からだろう。 彼女の上品な言葉遣いや、暖かみのあるオーラは堅苦しさがまるでない。 この場合意味は多少なり違うだろうが、持って生まれた才能というのだろうか。
『そうだわ、私今日は差し入れに行こうかしら』
いい考えだわ、なんて続けて言ってるナナシ。 そんなナナシの言葉に、若はピクリと反応した。
「差し入れ、とはもしかしてテニス部にか?」
『もちろんですけれど?』
「テニス部へは・・・」
『御迷惑かしら?』
これには若も押し黙る。 迷惑なわけはない、むしろ嬉しすぎる。 普段無愛想に見られる若だが、実は超が付くほどシスコンだ。 我が姉ながら、美しすぎるその容姿。 狙っている者も少なくは無いと知っている。 しかもテニス部。
「(あそこは危険すぎる)」
なんて思っている若に対し、そんなことには全く気付いていないナナシ。 意外と天然な部分もあるのか、一人差し入れの中身を考えていた。
『やっぱりレモンの蜂蜜漬けが宜しいかしら?』
笑顔で言われた時にはもう断ることはできない。 若は意を決したのか、頬を上げ微笑んだ。
「ナナシは料理が上手いから、俺は何でも嬉しい」
『嬉しいわ。なら、レモンの蜂蜜漬けにしますね』
「楽しみにしている」
ここ、氷帝学園にはちょっとした名物がある。 学年は2年。 少し色素の薄い髪色の少年と、艶やかな黒髪を上品に結っている少女。
今日も互いを想い、仲睦ましく学園生活を送っている。
END_若の場合 執筆20060522 再録20100315
またもNO加筆修正っていうね(これはこれで気に入ってるのです)
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