平凡 | ナノ

カラフルな列とマネージャー [4/4]


「連れてきました!」


その声に、背中を向けていた人はこちらを振り返る。さっきドン引きさせてしまった人じゃないか!まだ心の準備できてなかった!しかしその人は、さっきのことなんかまるでなかったかのように、小さく頷くだけで。拍子抜けというか、あ、紳士!

そしてその頷きが合図だったのか、私を連行した女の子はぺこりと頭を下げて離れていく。ともちゃんおつかれさま、なんて声が耳に届いた。

忙しない子だったな、と悠長な感想を頭の中に思い浮かべていたが、ふと、前方から何かを感じて視線をそちらに移した。


「っ!?」


ドン引きさせてしまった人ばかりに意識が向いていたけど、そんな彼の後ろには大量の男子がいて。思わず悲鳴が出そうになった。

こ、これはいったい!?まるで全校朝礼でも始まるのかというくらい、綺麗に4列に並ぶ色とりどりのジャージを身にまとう男子たち、の、視線。
ただこれは私にだけ注がれているわけじゃないと思う(というか思いたい)、ドン引きさせてしまった人の隣に並ぶ3人の女の子がいるからだ。な、何が始まるってのよ怖い!


「この合宿をサポートするマネージャーを紹介する」


マ、マネージャー?
なるほどなるほど、女の子たちは選手をサポートするために来ているのか。てことは、私がここにいるのはおかしいよね、カメラマンだもんね。
そう思い移動しようとしたのだが、なぜだか動き出せる雰囲気でもなく。そうこうしているうちに、ひとり、口を開いた。


「四天宝寺3年の田原秋帆です。ここでのマネージャーとしての経験は2回目になるんで、経験を活かして精一杯サポートします、よろしく」


横からしか見えなかったけど笑顔が可愛らしい人だ。そのうえ関西弁の使い手なんていろいろずるい気がする。ふんわりとした髪の毛が風に揺れる、それだけで絵になるくらい可愛らしい人ってこの世に存在するんだな。

そしてそんな彼女に続けとばかりに、少しおどおどした感じのこと先ほど私を連行した子が挨拶をした。


「青春学園1年の竜崎桜乃です。えっと、マネージャー経験はなくって、ご迷惑おかけすることもあると思いますが、一生懸命頑張ります……!」

「同じく、青春学園1年の小坂田朋香です!あたしもマネージャー経験ないですけど、みなさんのサポート頑張ります!」


挨拶の中の、青春学園という言葉がかなり衝撃だった。思わず笑ってしまいそうになるのを堪えたが、青春って、青春って……!

なんにせよ、覚えるのが苦手な私には彼女たちの名前はすでに記憶から消えかかっていて。いや、というかあまりにも学校名のインパクトが強すぎてですね云々と思っていると、ふと、気づきたくはなかったけど今度こそ本当に視線が集中していることに気づいた。



「テメェの番だろうが」

「え?」


いや、待って、私はマネージャーではない。


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