平凡 | ナノ

笑うところではないと思う [14/15]


合宿まであと2日。
3泊4日の泊まり込みだし、合宿場所というのはおそらく避暑地、そして泊まる場所はお化けが出ちゃうんじゃない!?と思わせるような少し古い建物で、と相場が決まってる!
リンスインシャンプーに決まってる!

ということで薬局に買い物に来た。


「てかほんとにお化け出そうだと困るけど」


小さく笑いながらカゴに必要なものを入れていく。
旅行用にまとめられている洗顔、化粧水、歯ブラシと歯磨き粉、シャンプー、リンス、もうすぐ無くなるから日焼け止め。こんな時だし保湿パックも買っちゃおうかな。って待って、これ合宿楽しみにしちゃってる感満載なんだけど。

ふと冷静になって保湿パックは戻した。


他にも必要なものはあるだろうかと、陳列棚の上から下まで視線を動かしながらゆるゆると歩みを進めて。あー可愛い色のマニキュアほしいなぁなんて柄にもなく考えて足が止まる。


「ほー、柿原も女なんじゃな」

「!?」


右耳に嫌に絡みつくような声が入ってきて、反射的に肩がびくりと揺れる。そうして顔を向ければそこには銀色の髪が目立つ男が立っていて。しかし彼の視線は私ではなく、私が持っているカゴに注がれていた。


「プ、プライバシーの侵害!」

「シャンプーにリンスに……旅行にでも行くんか」

「え、聞いて……」


ないの、と続けようと思ったけどやめた。なぜだか嫌な予感がするのだ、幸村くんよ、まさか私がカメラマンとして(強制)参加すること、誰にも話さず勝手に決めて……あぁそうだね、そういう決定権は全部幸村くんだよね!!

とはいえ、目の前の彼も頭が悪いわけではない。むしろ回転は速いだろう。


「なるほどな」


途中で止まった言葉の続きを理解したのだと思う、顎に手を添えて、口角はクッと上げて。そんな些細な行動でさえ様になるんだから、ほんと、神様は不公平。


「くくくっ」

「……?というか、よく私に話しかけられるよねあんたといい幸村くんといい、なんなの鋼の心の持ち主なの」

「心が広いからかのう、ちょっとやそっとじゃ響かんぜよ」


「心が、広い……」


何言ってんだこいつ、と思わずジト目で見てしまった。
そこでふと青りんごのことが思い出されたけど、ブンブンと首を振る。こいつなわけないじゃん!だってあのエロだよ!?

それにしてもまだ肩震わせて笑ってる?んだけど、何がおかしいのか聞きたいところだ。私はただ3泊4日の旅行(合宿)のための必需品を購入しているだけだというのに。


「あの仁王く、」

「楽しみじゃな、2日後」


最後にもう一度カゴの中身を見て笑い、くるっと身体の向きを変えて去って行った。

だから、何がそんなにおかしいのよ!!


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