ほんの少しの捜索活動 [13/15]
暑い暑い日、変わらず学校へと向かう。ほんと、これはただの意地だ。どこかの誰かは放棄しちゃえばいいじゃんと言うかもしれない、テニス部の誰かさんは来なければいいのにと思っているだろう、私だって、なんでこうも律義に出向いているのかもはやわからなくなった。
あっつ、と呟きながら正門から学校敷地内に入る。
今日はどこで撮ろうかな夏バテだし日差しの強い場所にはいたくないなぁと視線を地面に落とし気味で歩いていれば、前方から軽快なリズムが聞こえてきた。誰かが走っている。
そしてそれは、目の前で止まったようで。
「……」
「……な、なに」
そんな邪魔になるように歩いてないよね!?てかそっちが避けて走り続ければ問題なくない!?息を切らすでもなく、目の前で止まって睨むように見てくるのは、丸井くん。堪らず言葉を発してみるけど何も反応はなく、ただ、彼の額から流れた汗だけが静かに地面へ落下した。
何が怖いって、彼とこうして近距離でいることだ。あの一件以来、ここまで近づいたことがあっただろうか、いや、ない。
ジャリ、と思わず右足を後退させる。
「おまえさぁ、」
「!」
「丸井せんぱーい!今日珍しく早いっす、ね……って、……チッ」
不機嫌そうな丸井くんの肩越しに、まるで犬のようにはしゃぎながら走ってくる人が見えたので逃げたかったのだけど、思ってたよりスピードがあったのか到着する方が早くて失敗に終わる。そして盛大な舌打ちを聞く羽目になるなんて。
舌打ちなんて!したいのはこっちだバーカ!!
「練習の邪魔はしないので。」
かなり冷ややかな言い方になったと思うけど、仕方がない。だって、絡みたくないのだ。二人の視線から逃げるように立ち去ったその足で向かうのはテニスコートではなく、グラウンド。
音で表現するならば、パコーンではなく、ボコーン……?みたいな感じ。
サッカーって音で表現するの難しくないか。
「裕斗!」
「えっ、志眞」
ぱちくり、そんな言葉がぴったりだった。ベンチのすぐそばで軽く身体を動かしている裕斗に声をかければ、非常に驚いた様子で。それが少しおかしくて頬が緩む。
「さすがにそろそろ来ないと思ってた」
「サッカー部に?」
「いや、テニス部含めてこの夏休みの学校に」
「あー。うん、まあ、今日はちょっと聞きたいことがありまして」
「俺に?」
「うん」
そわそわそわと目の前の身体が揺れる。
いやそんな期待の眼差しを向けないでくれ、大事な話ではない。
「サッカー部に今回の事情詳しい人いる?というか、話したりした?」
「話すわけねーじゃん!」
そんなペラペラ話すような男に見えるのかよ、と呆れたような声色。
別に疑ってるわけじゃないけども。
「ならいいんだけど」
「なんでそんなこと聞くんだよ?」
「(さすがに青りんごのことは言えない、私が男とメールしてると知ったら……)いや、ファンクラブとか学校事情に詳しい人いるのかなぁーって」
「テニス部に興味無いしなあ、詳しい奴いないと思う」
「だよね、ありがと」
いるわけないか。というか、簡単に見つけられたら怖すぎるからむしろいなくてホッとした。
私の謎な質問に小首を傾げたが、練習に入るようで、ひらりと手を振りコートの中心へと走って行った。
あ、合宿のこと……いや、話さない方が得策か。殴り込みに行きそう。
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