平凡 | ナノ

メル友と、合宿と、 [12/15]


From:青りんご
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久しぶり。
自分のためを思っての行動も
悪いわけじゃねえけど
ぶっちゃけ俺は嫌だなって思った。


ふーん……

てかその相談事さ、俺、心当たりあんだけど。
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「俺、心当たりあんだけど。……え?」


思わず画面に表示されている言葉を口にしてみる。
今朝、青りんごから数日ぶりに届いたメールで、非常に重たい内容の相談だからどんな返事がくるのか、もしかしたら連絡来ないかもしれない、とドキドキした数日を過ごしていたわけだけれど、予想外の内容だった。

どういうことだろう。
まさかうちみたいにファンクラブがあって同じような状況が繰り広げられている学校が存在してるってこと!?むしろそう思いたいよね、いやだって、まさかそんな。


「同じ学校なんてこと、ある?」


この広い世の中だぞ、4年前に偶然知り合った青りんごが偶然神奈川県民で、偶然立海生でなんてそんな偶然あるわけないじゃん!怖すぎるよははは!
(でも世間は狭いとも言うわけで)

返信ボタンに指は伸びず、現実逃避とばかりに枕の下に追いやって外に出て写真撮りに行こうかなと机の上に置いてあるカメラを撮ろうと手を伸ばした時だった。


ブーッ、ブーッ、ブーッ

「!?」


枕の下で震える携帯。
えー待って怖い取り出したくない、見たら終わる、頭の中ではしきりに警鐘が打ち鳴らされている。そして止まらない携帯のバイブレーション。これ確実にあの人だ。

数秒、数分、待てども待てども止まらないそれに完全にホラー映画さながらの恐怖感とちょっとのウザさを感じ、ついに枕の下から携帯を引っ張り出して通話ボタンを押した。


「なんなのもううるっさ」

『携帯近くに置いてなかったのかな?ここまで待たせられるとさすがの俺も』

「(電話越しなのに背筋が寒い!?)す、すみませんでした、幸村くん」

『無駄な時間使ったから本題言うけど、合宿来い』


「……は?」


合宿、そういえばこの前吉田さんがそんなこと言ってたなぁ。じゃなくって!


「やだ行かないよ!?」

『専属カメラマンに拒否権があると思ってる?』

「思って‥」

『赤也との約束、忘れたのかな』

「うっ」


そんな遠い昔の話(のことでもないけど)引っ張り出さないでくれるかな!でも思い出作りと言えば合宿というのはよくある話で、カメラの出番であることに間違いはないし、最近カメラマンとしては無意味にというかもはや意地で頑張っているけど何もこの険悪な状況で泊りがけの合宿なんて地獄!!


『5日後、3泊4日で合宿だから、よろしく』

「え、あ、ちょっ」


ブツッ、ツー、ツー、ツー


悲しく鳴り響く無機質な音。
え、……あの、マジ?


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