平凡 | ナノ

視線感じて当たり前 [11/15]


「ねえ丸井、」

「なんだよ幸村くん」

「友達は元気?」

「友達?」


「そう。前に話してただろ、えっと、なんて名前だっけ」

「ああ……」


吉田さんのために幸村くんチームの方に来てみたけど、お祭り楽しんでる?

なんか丸井くんは元気がないというか眉間にしわ寄ってるけど……とりあえず写真撮れればいっか。カメラを構えてパシャリパシャリとシャッターを押す。撮られてるかなんて気づいてないから、ピースはないし笑顔も向けないし自然な表情で最高だね。自然な笑顔もないけど。


「なんなの丸井くん」


レンズから目を離し、肉眼で様子を見る。

切原くんと一緒になって子供らしく遊ぶようなイメージあったけど、今日は保護者みたいになってるよあいつ。誰あれ。最初から最後まであの状態なわけ?

気にしててもしょうがないんだけど。
小首を傾げながら再びカメラを構えて、幸村くんに焦点を当てて撮り始めた。ふわっとした笑顔出さないかな、吉田さんが卒倒しそうな感じの。それ撮れたらもう満点でしょ。


「……!」


あ、あっぶな!!!
今切原くん、こっちに視線向けなかった?

バックンバックン。心臓の音が半端ない。
見つかったら切原くんが悪魔化して、私は血だらけジ・エンドかもしれない。部長命令とは言え隠し撮りだ。というか任務遂行できなくて幸村くんに何か言われるかもしれない方が何倍も怖いけど。


「はあああああ」


なんか疲れた。見つからないように撮るって、精神的にドッとくる。あの場で大っぴらに撮るのも精神的に色々やばいけど。


「部長、なんかさっきから視線感じるんすけど、俺の気のせいっすかね」

「視線ならどっからでも感じるけど」

「いやそういうんじゃなくて、なんか変な視線。ストーカーされてる気がするっす」


「ふうん?」


バクバクバクバクバクバク

なぜこんなにも会話が聞こえる!?
地獄耳ってやつか、自分にとって不都合なことだから鮮明に聞こえる。てか、切原くんひどいなぁ、私がストーカーだって?これはね、使命なんだよ、使命。


「まあ、仕方ないよ赤也。俺たちを無視できる人は少ないんだ、ストーカーだっていても不思議じゃないだろ?」

「そっすね」


いやいやいや、そっすね、じゃなくない!?
さり気なくナルシスト発言したんだけどさ、いや、ごもっともなんだけど、自分で発言できちゃうのがムカつく!


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