平凡 | ナノ

プライベートな思い出 [10/15]


「あー鬱鬱鬱鬱鬱……」


日が落ちてほんの少し薄暗くなった頃、私は携帯と小銭入れとカメラを持って家を出た。

向かう先は、近所の神社。
きっともう賑わっているんだろうな、親友らと行けたらどんなに楽しかっただろう。しかし、今日は遊びではなく任務なのだ。テニス部思い出作りの。


これなら良いだろ?(^-^)

の、顔文字の後ろに「来なかったらフフフ」みたいな副音声的な何かが見え隠れしたから、呪われるのは嫌なので仕方なく出陣。ただ、一緒に行動するわけではない。色々と酷いことを言った手前、カメラ片手に私が登場してしまったら向こうも嫌でしょ。楽しいお祭りが一気に地獄と化すよ。

だから、隠し撮りみたいになってしまうけど、人波に紛れ込んだり木の陰に隠れて撮る。


神社に近づくにつれて、お祭りならではの陽気な音が耳に届いて気分が上がった。自然と口元が緩んだが、ハッとして頭を振る。楽しむために来てないから!!気持ちを通常運転に戻してから、境内に踏み込んだ。あの集団ならすぐ見つけられるだろう。

そして数分後、
あの目立つ集団を見つけた。



「あっ丸井先輩、あれで勝負しましょうよ」

「いいけど」

「? 元気なくないっすか?」

「んなことねーよ」


「フフ、綿菓子でも欲しいのかな」

「ガキか」

「誰も綿菓子欲しいとか言ってねえだろぃ」


何が悲しくてレギュラーで行くんだろうね。みなさん彼女のひとりやふたり、いないのでしょうか。いや、何股されてても困るけど。それよりデートでお祭りに来た男の人が非常に可哀想である……彼女の視線を奪われているじゃないか。


「ま、いいや、撮ろう」


レンズ越しにレギュラーを映したと同時だった。

なぜか二手に分かれた!
ちょっとおお!なんで今このタイミングで分裂!?これじゃ平等に撮れないし……って、うわ、幸村くんと目が合った。おかしいな、見つからないようにしてたのに、なんて鋭い奴。


ブーッブーッ

From:幸村精市
------------------------------
そう簡単に撮らせるつもりないよ
頑張ってね、柿原さん

偏らないようにね(^-^)
------------------------------


「最悪……」


意図的に分裂したレギュラー。
さて、どちらへ行こう。


……吉田さんのこともある、先に幸村くんのプライベート写真でも撮っておこう。


しおりを挟む