平凡 | ナノ

夏と言えば海 [6/15]


あなたは周りを気にしないで、むしろどんどん仲良くなっちゃいなYO!!

前回の話を要約するとこんな感じだろう。いや、こんなテンションはっちゃけてはいなかったけど、こういうことを言われたわけで少々混乱している。


でもすでに気まずい雰囲気なのに、今更また気安く話しかけるなんて、私には無理だ。


「しかも今、夏休みだしね」


ごろん、とベッドの上に寝転ぶ。
夏休みの宿題をやっているが、なかなか進まず休憩という名の現実逃避。特に数学がやばい。あああやだやだだるいー、と冷房の効いた自室でのんびりしていると携帯が鳴った。


「もしもし」

『あ、志眞起きてた?』

「何時だと思ってるの。さすがに起きてるし、宿題してるし!」

『おお、偉い』


通話相手は裕斗だった。
外部受験なのだから私より忙しい夏休みを過ごしているはずなのに、驚くほど元気な声である。


『海行こ、海!』

「えー、やだよ暑い。溶ける」

『だから行くんじゃんか。ちなみに、美佐は暇だから来る』

「マジでか。暇ってあの子……」

『だから来なって!志眞来てくれたら、俺両手に花なんだし』

「アホ。」

『15時に駅前な。おっけ?』

「ええっ‥あと20分じゃん!わかった急ぐ」


突然すぎるでしょあのバカ!
ベッドから起き上がり、水着とタオルを取り出してバッグに詰める。あと何が必要かな……あ、ビーチボールとか?

面倒に対応したくせに、意外と遊ぶ気満々だったりしてね。そうだ、カメラカメラ。








「お待たせー」

「何日ぶりの志眞だろー!!」

「2日ぶり」

「あんた達、そんなに会ってるの」

「学校で」

「ああ、カメラマンね」


それにしてもよく行けるね、なんて言葉を浴びながら涼しい電車に乗り込んだ。

さすが夏休み、子供がたくさんだ。
この子達もきっと海に行くんだろうなと思いながら窓から見える海を眺めた。砂浜、超人多いんだけど。さすが、夏休み……。


ザザーン、ザザーン

「青い空、青い海、たくさんのガキ、そして両手に花最高!」

「うるさい」

「てかキモイ」

「美佐ひっでぇ」


更衣室で水着に着替え、太陽がジリジリ照りつける砂浜に出て落ち合えばそんなセリフ。

焼けないと良いな、大量に日焼け止めは塗ったけど……私って焼けると赤くなってヒリヒリして痛くてお風呂で死にそうになる体質だから嫌なんだよね。


「よっしゃ海入るぞー!」

「うあっ」

「裕斗!引っ張らないでバカ!!」


まさに両手に花みたいになってる。
左手には美佐の手。右手には私の手を握り、海一直線に砂浜を走り出す。うわあ、これじゃあそこら辺にいる子供より子供っぽい!


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