親友の存在 [4/15]
今年になって初めてテニス部と関わったから知らなかったけど、この時期の活動は静か。女子もいるけど、その子達も部活をしに来ているのだから、わざわざこちらに顔を出すほど暇ではない。
ファンクラブの子も、この暑い中ただ応援しに来るなんてことはない。
パコーン、パコーン
長々と続くラリーを、テニスコートの外、大きな木の下で涼みながら眺める。
手にカメラは持っている。
けど、撮る気にはなれなかった。
「……またスランプかも」
撮る気力がない。スランプ、もしくは夏バテで何もする気が起きないだけか。
立っているのも疲れた。
ほんのりと冷えている木の幹に背中を預け、するすると膝を曲げて地面に腰を下ろした。思えば、彼らとの雰囲気悪いのにちゃんと写真を撮りに来る私って、ぶっちゃけ何なのだろう。あいつらも、なんで来てんだろって絶対思っているだろうけど。
ため息が零れた。
じわりとやって来た睡魔により瞼が重たくなった時、目の前を丸井くん(呼び慣れない)が通過して行った。直射日光を浴びる赤色がすごく眩しくて、ああ、丸井くんって夏が似合うなと思った。
それと同時に、スルーなんだ、とも。
まあ、月刊プロテニスの取材でたまに来る人達にも、インタビューされなければ基本スルーだから当たり前か。カメラマンに愛想なんて振り撒いても無駄ってわけよね。
……愛想なんて振り撒かれたことないけど。
「志眞〜!」
「あ、裕斗」
ぼんやりしていれば、グラウンドの方から大きく手を振り走って来る裕斗の姿。
サッカー部も今夏大会があるから、それに向けて一生懸命なのだ。駆け寄って来た彼の額や首から出る汗は、タオルで拭いても止まることを知らない。
「お疲れ様」
「おう。志眞の顔見れたら復活」
「よかったね」
「なんだよー照れてんの?」
「まさか」
「……あ、そうだ」
しれっとした回答に少しムッとしたようだけど、しばらくして何か閃いたのか目が光った。次に出てくる言葉、なんとなく予想がつく。
「今から昼休憩なんだけど、その姿をさ、数枚で良いから写真撮って!」
「言うと思った」
「だってよ、志眞、ここにいてもテニス部撮らねえだろ」
「あー……そうだね」
「お願い!あいつら、志眞の撮ったこの前の写真見たら気に入ってさ」
だから練習風景以外にも!と、顔の前で両手を合わせてお願いしてくる裕斗。ちらりとテニスコートを見れば、彼らもどうやら昼休憩に入るらしい。なら別に問題ないかサッカー部に行っても……いや待って、そもそも彼らの許可が必要でも何でもないんだけど。
「良いよ」
「サンキュー!志眞大好き!」
「はいはい」
「ちょっとは照れろよ」
「それはない」
嬉しそうに顔を綻ばせる裕斗に、私もつい笑顔が零れた。やっぱり親友って素晴らしい。
何かを追及されることもないし、
ただ、傍にいてくれるだけで安心する、そんな関係。
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